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悪夢再び、CL大逆転負けのバルサ。
「偶然」とは言えない敗因を探る。
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph byUniphoto Press
posted2019/05/15 11:45
メッシの力で相手をねじ伏せている時はいい。しかしそれができない時のバルサは、あまりに脆い。
デヨング獲得で本質に戻るのか。
もっとも、そうした選択肢を迷わずチョイスできないところに、今のバルサの苦悩はあるのだろう。
「本質を見失ってはいけない。見失うと、いつでも改革という美名のもとに大切な本質が失われる。変えるべきは変え、変えないべきは変えないことが大切だ」
『ソニー』の創業者のひとりである盛田昭夫氏は、そんな言葉を残している。門外漢ゆえに的外れであったら申し訳ないが、『ソニー』の凋落は、本質=お家芸である技術や“モノづくり”を軽視したところから始まったのではないか。
クリスティアーノ・ロナウドの圧倒的な個の力を前面に押し出し、CL3連覇の大偉業を達成した宿敵レアル・マドリーのやり方を模倣しようとしたのなら、それは大きな間違いだ。なぜならそれはマドリーのスタイルであって、バルサのDNAに組み込まれたスタイルではないからだ。
来シーズン、バルサよりもずっとバルサらしい戦い方で今シーズンのCLを席巻したアヤックスから、中盤のコンダクターとして異彩を放ったフレンキー・デヨングがカタルーニャの地にやって来る。果たしてそれは、バルサがフィロソフィーを、本質を取り戻すきっかけになるのだろうか。
時代が変化しても、変わってはいけないものが、蔑ろにしてはいけないものが、どんな世界にも必ずあるはずだ。
CL準決勝で惨めに散ったバルサと華々しく散ったアヤックス。ふたつの古巣の対照的な負けざまを天国で見届けて、近代バルサの創始者であるヨハン・クライフも、きっとこう呟いたに違いない。
「本質を、見失ってはいけない」