ラグビーPRESSBACK NUMBER
堀江翔太の、怖いことと楽しいこと。
「ラグビーW杯にすべてをかける」
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byMiho Watanabe
posted2019/05/15 08:00
堀江翔太の風貌は変わったが、ラグビー選手としての幹は何も変わらない。頼りになるフッカーが帰ってきた。
「15年前に逆戻りするのはホントに怖い」
堀江の声に芯が通る。気負いも力みも感じさせない。
「全試合勝って上へいくイメージはできています。ここには負けそうやなとかは全然思わなくて、自信を持って自分たちのラグビーをすれば。日本代表としてのプライドは毎試合残して戦わなきゃいけないし、残すというのはピッチに刻むということで。
観ている人が『頑張れ!』とか『代表やるな』って気持ちになるような試合をしないと。ラグビーに携わっているすべての人たちの代表として、すべてをかけてやらなあかんなと僕はいつも思っています」
ラグビーへの周囲の関心がささやかでしかなかった時代からプレーし、'15年W杯後の熱狂も体験した。自国開催のW杯の結果によって、日本ラグビーの未来図は変わってくる。
それでも、堀江に悲壮感はないのだ。
「15年前の日本ラグビーの感じに逆戻りするのは、ホントに怖いです。いまだったらトップリーグの試合に1000人ぐらい入るのが普通ですけど、その前は何百人のなかでやっていたので。そういう環境に戻るようなことは、絶対に避けなければならない。
そのうえで言えば、なんかこうトシを取っていくにつれて、楽しみながらラグビーをするのが一番やなってのは、ホンマ最近思いますね」
ラグビー選手としての楽しみ、とは。
ラグビーに限らずトップアスリートの多くは、経験を重ねていくことで原点へ立ち返る。「なぜその競技を始めたのか」との自問自答をするなかで、「楽しむ」ことの重要性を再確認するのだ。勝敗を度外視するわけでなく、自己本位にプレーするわけでもない。スポーツの本質と向き合うのである。
3度目のW杯を控えた堀江も、そうした境地に辿り着いている。
「なんかこう責任を背負いすぎて、ビビッてラグビーをしているよりかは、自分が楽しめるようにラグビーをしたい。楽しみっていうのは自分が楽をするとか、気合を入れなくてただラグビーをこなすとかではないんです。
ホントにしっかりといい準備をして、そのすべてを試合にバンとぶつけていい結果を得る、というのがラグビー選手としての楽しみなので」
W杯出場は今回が最後かもしれないと言いつつも、レベルアップへの欲求は尽きるところがない。「まだまだ、全然飢えてますねえ」と、堀江は大らかで爽やかな笑顔を浮かべた。