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長谷部とフランクフルトの旅の終焉。
ELの残酷なPK決着、街は一色に。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2019/05/14 17:00
長谷部誠とフランクフルトの偉大な挑戦はELベスト4で幕をおろした。残す最終節に来季のCL・EL出場権がかかっている。
長谷部はリベロではなくアンカー。
チェルシー戦5日前のブンデスリーガ第31節ヘルタ・ベルリン戦は、相手が退場者を出す中でスコアレスドロー。第30節のヴォルフスブルク戦も1-1の引き分けだったため、4位フランクフルトはレバークーゼン、ボルシアMG、ホッフェンハイムなどの突き上げに遭い、その勝ち点差がじわじわと縮まっているところです。
長谷部誠と話をした際は、さすがに疲労困憊な表情を浮かべていたのが印象的でした。Jリーグでも週2試合のゲームが続くこともありますが、こちらの試合強度や対戦相手の力量に鑑みれば、その心身に及ぼすダメージは相当なものなのだと思います。
「シーズン終盤になって、さすがに疲れてきたね」と吐露する長谷部はそれでも、「ここが正念場だから」と言ってチェルシーとの大一番へ果敢に挑もうとしていました。
チェルシー戦で長谷部が務めたのは従来のリベロではなく、3-1-4-2の「1」のアンカー。アドルフ・ヒュッター監督によると、「チェルシーのセンターフォワードの(オリビエ・)ジルーに対して、フィジカル、スピードで対抗できる(マルティン・)ヒンターエッガーが必要だった。そして、相手前線へのパスコースを消し、自分たちでボールを持つ展開を作るためにアンカーでマコトを起用した」とのこと。
プレミアの強烈な圧力に晒され。
しかし蓋を開けてみると、長谷部とフランクフルトの面々は、チェルシーの選手たちが醸す強烈なプレッシャーの嵐に晒されます。
ホームなのにボールをキープできない。相手のアプローチが強烈でフリーになれない。一度ボールを奪われると一気に自陣ゴール前まで展開されてしまう。ブンデスリーガでは感じたことのないパワープレッシングとハイスピードトランジションに、さすがのフランクフルトも面食らっているようでした。
試合開始から数分で「相当厳しい試合になる」と覚悟せねばならないほど、チェルシーの力は圧倒的でした。
それでも、フランクフルトはフィリップ・コスティッチとヨビッチの“黄金ライン”が先制点を奪取。「そのまま!」を心の中で連呼した僕ですが、そんなに甘くはありません。必死の防御で前半を終えようとした間際、ペドロ・ロドリゲスのシュートを浴びて同点に追いつかれ、その後はかなりの時間で守勢に回りながら1-1の引き分けで第1戦を終えました。