ブンデス・フットボール紀行BACK NUMBER

長谷部とフランクフルトの旅の終焉。
ELの残酷なPK決着、街は一色に。 

text by

島崎英純

島崎英純Hidezumi Shimazaki

PROFILE

photograph byGetty Images

posted2019/05/14 17:00

長谷部とフランクフルトの旅の終焉。ELの残酷なPK決着、街は一色に。<Number Web> photograph by Getty Images

長谷部誠とフランクフルトの偉大な挑戦はELベスト4で幕をおろした。残す最終節に来季のCL・EL出場権がかかっている。

リーグ戦では惨敗、空気も重く。

 チェルシー戦の3日後、さらなる悲劇が……。

 レバークーゼンとのアウェーゲーム。フランクフルト中央駅の真正面、街で一番大きなパブには立錐の余地もないほどにお客さんが詰めかけましたが、フランクフルトはなんと前半だけで6失点……。

 みんな最初は「何やってんだよ!」と野次を飛ばしていましたが、2失点、3失点と惨劇が続く度に「あぁ」とか「うぅ」とか、呻き声しか出なくなって、終いにはゲーム中にもかかわらず「おあいそ」と言って店から出ていく始末。

 結局試合は1-6。チェルシー戦から中2日のアウェーゲーム。フランクフルトはメンバーを4人入れ替えて臨みましたが、バックアップの層が薄いうえに長谷部、コスティッチ、ダニー・ダコスタ、ヒンターエッガーらの主力は連続出場の疲労も見え、チームのプレーレベルを保てない状況が、そのまま結果に反映されてしまいました。

長谷部にタメ口で接する21歳の強心臓。

 ところが、そんな手負いの“犬鷲”が不屈の闘志を見せてくれました。

 2019年5月9日。僕はこの日の戦いを決して忘れません。ロンドンのスタンフォード・ブリッジに降り立ったアイントラハトの選手たちは常に戦闘的で、相手に一歩も引かず、勇敢な姿勢を保ち続けました。

 前半に“重戦車”ルーベン・ロフタス・チークのゴールで先制されても気力は萎えず、後半開始直後に長谷部を起点としてヨビッチが値千金の同点弾をマーク! GKケパ・アリサバラガと対峙しても沈着冷静に仕留めたヨビッチの強心臓ぶりは見事。さすが、長谷部“先生”にタメ口で接する21歳。素晴らしい!

 90分のゲームは1-1で終了。2戦合計2-2。アウェーゴールも双方1点ずつで延長戦に突入。しかし、それでも雌雄は決まらず、決勝進出の行方はPK戦に委ねられました。

 先にチェルシーのセサル・アスピリクエタが外したものの、その後、フランクフルトはヒンターエッガー、ゴンサロ・パシエンシアが連続でシュートをストップされ、彼らの夢への旅路は終焉を迎えました。

 ここまでよく辿り着いたと感慨に耽りつつも、遥か彼方にあったはずの頂がすぐ傍まで近づいてきた刹那に撤退を余儀なくされるのは本当に無念。悲しみに打ちひしがれながら、それでもチームは再び前を向かねばならず、残酷な現実に直面する中、フランクフルトは今季残されたブンデスリーガの2試合に注力せねばなりません。

【次ページ】 フランクフルトは、いつもとおりの空気。

BACK 1 2 3 4 5 NEXT
#長谷部誠

海外サッカーの前後の記事

ページトップ