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「午前決勝」の敵は暑さより騒音?
東京五輪の選手村環境を考える。
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byGetty Images
posted2019/05/04 17:00
今年2月に報道陣に公開された、中央区晴海に建設中の選手村。
選手村の夜はパーティ続き?
問題は部屋の外の騒音だ。
前半に試合が終わり、閉会式まで時間のある他競技の選手達が、夜な夜な選手村でパーティをしたり、外出して夜中に帰ってきたときに騒いだり、ということは一般的だと聞く。
五輪まで節制したり、ストレスが多い生活をしているため、競技後にハメを外す選手も多いだろう。連盟によっては後半日程の選手を気づかって、前半の選手を早く帰国させるケースもあるが、全てではない。
夜11時以降は静かにしてくださいと言われたら、多少気を使うことはあっても、午後8時以降に静かにしてほしい、と言われてもなかなか厳しい。
メダルや入賞を狙う選手たちは、選手村に宿泊しないケースも多い。形式上、選手村に入村手続きをしたあと、代理人やチームのマネジャーが手配したホテルや一軒家などに移り、最終調整を行う。シドニー五輪で金メダルをとった高橋尚子選手も、コース近くの家を借りていた。食事や睡眠など自分にとって快適な環境で調整する選手も多い。
そういった対策が取れるチームや選手には、レース前の睡眠確保は問題ないかもしれないが、財政的に余裕のない選手にはそれも難しいところだ。
とはいえ、質の高い睡眠の確保はパフォーマンスにも影響してくるため、選手にとってはクリアしなければならない問題だ。
最終的には精神力の勝負になる。
解決策はあるのか、と聞かれても、なかなか答えられないのが現状だ。
選手村でもホテルでも完全防音の場所はないし、生活音を消すことは難しい。普段と異なる環境でもストレスを溜めず、自分のペースで生活できるような精神力を身につけるしかない。
発表された五輪の日程を見て、「暑くて大変」、「朝早くてきつそうだな」と思われた方もいると思うが、その舞台にたどり着くまでの選手の苦労も知ってもらえればと思う。