ファイターズ広報、記す。BACK NUMBER
栗山監督に手渡した1枚の記事。
日本ハム元オーナーが残したもの。
text by
高山通史Michifumi Takayama
photograph byMichifumi Takayama
posted2019/04/26 11:00
今年3月に球団取締役を退任した2代目オーナー大社氏(中央)を囲んで選手、スタッフが集まり、札幌ドームでセレモニーが行われた。
栗山監督に渡した1つの記事。
回想してもらうと、北海道日本ハムファイターズを長きにわたって率いたトップとしての生き様が垣間見えてくる。
大社さんと栗山英樹監督――。
スポーツキャスターから監督へ転身する契機となった時、大社さんはオーナーだった。就任1年目の2012年3月までが任期で、その後はオーナー代行へと転じた。2011年シーズン中に、今季で8年目を迎えた現職へと栗山監督を導く最終決断を下したのが、大社さんである。
栗山監督は就任間もないころ、1つの記事を手渡された。大社さんはサッカーに造詣が深い。
イングランドのプレミアリーグ、マンチェスター・ユナイテッドの名将として鳴らしたアレックス・ファーガソン氏の思考が記されていた。
近づき過ぎはダメ、引いて見る。
栗山監督は、述懐する。
「ファーガソンの監督としての考えについて、書かれた記事でね。練習の時なんかに、選手とかコーチの輪の中には入らず、あえて引いて見ると、いろいろなことが見えるようになった、ということが書かれていた。それは、響いた」
大社さんは、多くを説明することなく、その記事を手渡しただけだったという。
栗山監督は試合前、練習をチェックする際の一定のスタンスがある。コーチ、選手らが密集している打撃ケージの裏周辺ではなく、一、三塁側ファウルゾーン、また外野などに多くの時間、位置取りする。俯瞰してチーム、選手、コーチ、全体の動きに目を凝らしている。
「近づき過ぎはダメ。引いて見ると、この選手は『元気だな』、『少し元気がないな』とかが見えるんだよ。それは間違いなく、大社さんからいただいた記事がきっかけになった」
トップに立つ、また立った者同士。直接の言葉はなくても、共鳴したのだろう。