野球善哉BACK NUMBER
国内は打高投低、MLBに野手は0人。
日本野球に何が起きているのか。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNaoya Sanuki
posted2019/04/28 11:00
イチローは確かに別格である。しかし、MLBに日本人野手が0人というのは
国際大会で沈黙する日本の打者たち。
しかし気になるのは、国内では猛威を奮っている打者たちが、国際大会になると持ち味を発揮できていないという事実だ。
U18のW杯では優勝を逃し続けているし、昨年秋のU18アジア選手権では3位を死守するのがやっとだった。ライバルの韓国や台湾が高校生年代から木製バットを使用している中、金属バットに慣れた日本の打者たちは木製バットへの順応に苦しんだのだ。
WBCでも、2大会連続で決勝進出を逃しているが、そのたびに「動くボールへの対応」を指摘されている。高校生年代では「木製バット」、大人になってからは「動くボール」と、その対応力がいつも課題になるのは、日本の打者たちの打撃技術の低さを浮き彫りにしていると言えるだろう。
木製バットに苦しむ国際大会での高校生と、WBCで苦しむプロ選手、そしてメジャーリーグから消えた日本人野手。これらは一見別のことのようで、実はつながっているように思う。
金属バットの経験が足を引っ張ることも?
昨年秋、中学生年代で「低反発金属バット」を使用してリーグ戦を行っているチームを取材した。DeNAの筒香嘉智が小学部のスーパーバイザーを務める堺ビッグボーイズだ。
堺ビッグボーイズのコーチで、ドミニカ共和国に何度も渡って同国のアカデミーを熟知している阪長友仁氏は、日本人打者の苦悩をこう指摘している。
「バッティングの技術をつけていくためには、ジュニア時代から一貫性のある練習を継続していくことが大切だと思います。しかし今の日本では、高校生までは金属バットを使用していて、その後は木製バットを使用します。つまり、全く違うバッティングを覚えなくてはいけない。これは本当に大変で、子どもたちがかわいそうな状況だと思います。金属から木製にバットがかわると、0からのスタートどころか、金属バットでの技術が足を引っ張ってマイナスからのスタートになる場合もあるんです」