野球善哉BACK NUMBER
国内は打高投低、MLBに野手は0人。
日本野球に何が起きているのか。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNaoya Sanuki
posted2019/04/28 11:00
イチローは確かに別格である。しかし、MLBに日本人野手が0人というのは
打者有利の状況が投手を育てた可能性も。
たしかに甲子園でホームランが量産されれば、見ている方は楽しい。打者もボールが飛べば楽しいし、観客が入れば野球界が潤うようにも見える。木製バットは消耗品であり、経済的な理由で導入が難しいチームがあることもわかる。だが現実問題として、メジャーリーグに日本人野手が誰もいない事態について、どう考えればいいのだろうか。
裏を返せば、その打者有利の環境を生き延びるために投手たちのレベルが上がった、という可能性はある。彼らは質の高いストレート、制球力、変化球の切れを身につけ、メジャーリーグにも通用する投手に成長したのかもしれない。
しかしこのまま打者有利が進み続ければ、投手はさらなる負荷を抱えることになる。
強打を恐れてコースのギリギリを狙えば、ボール球が増えて球数も増える。特殊な変化球を覚えることで肘や肩に負担がかかる投手も出るだろう。ただでさえ登板過多が指摘されている現在の状況を考えれば、決して歓迎できる流れではない。
イチローが引退して1カ月――
日本の野球界に突きつけられた現実は、育成環境そのものを再考するきっかけにすらなりうる。