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W杯直後は波乱が起こりやすい……。
CL4強、決勝の地に降り立つのは? 

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井川洋一

井川洋一Yoichi Igawa

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posted2019/04/30 10:00

W杯直後は波乱が起こりやすい……。CL4強、決勝の地に降り立つのは?<Number Web> photograph by Getty Images

エースを欠くトッテナムは、頼みのソン・フンミンも1stレグ出場停止。しかも、相手は波に乗るアヤックスだ。

ケインの負傷は痛手となるか。

 トッテナムはバルセロナ、インテルらと同居した最激戦区を2位通過したあと、劣勢とも予想されたドルトムントとのラウンド16で連勝。準々決勝ではシティとのプレミア対決に臨み、第1戦──新たな本拠地で初めて行なわれたCLの試合──に1-0と先勝したあと、敵地での第2戦はめまぐるしい撃ち合いに。

 21分までに5ゴールが乱発したあと、後半にも1点ずつが入り、試合終了間際にはシティが決勝点を決めたかに見えたが、VARがオフサイドの判定を下し、スパーズが一瞬諦めかけた4強入りを手繰り寄せた。

 ただし彼らは、準々決勝第1戦でエースストライカーのハリー・ケインを失った。試合中に足首を負傷した主将に復帰の目処は立っておらず、今季もチーム最多得点を記録している背番号10の不在は大きな痛手となる。シティとの2試合で3得点を挙げたソン・フンミンの好調は心強いが、1stレグは累積警告で出場停止。センターフォワードの代役を務められるフェルナンド・ジョレンテも計算は立つが、果たしてどうなるだろうか。

今大会の主役、アヤックス。

 そんなスパーズのマウリシオ・ポチェッティーノ監督が「レアル・マドリーとユベントスを下した彼らの方が勝ち上がりに近い」と評するアヤックスは、今大会の主役と言っても過言ではない。昨季のエールディビジを2位で終えたオランダの名門は、予選2回戦から6試合を経てグループステージに到達し、バイエルンに次ぐ2位で決勝トーナメント進出。マドリーとユベントスの優勝候補2チームに土をつけ、欧州中のメディアから喝采を浴びた。

 過去に4度の欧州制覇を果たしながら、最後に頂点に立った1995年以降は、他国のビッグクラブとの財政面の差やプレースタイルの変化により、欧州での存在感を失っていった。

 しかし2010年にクラブのレジェンド、ヨハン・クライフが「こんなものは、もはやアヤックスではない」と現地紙に怒りをぶちまけ、自らがアドバイザーに就任。のちに“ベルベット・レボリューション”と呼ばれることになる改革を断行していった。伝説の背番号14は5年後に失脚してその座を離れたが、この期間に蒔いた種が今、見事に大輪を咲かせているのだ。

 再生された下部組織で育まれた現在19歳の主将マタイス・デリフトやドニー・ファンデベーク、ヌセル・マズラウィ、18歳で加入したフレンキー・デヨング(来季からバルセロナへ)に加え、3月にセレソンにデビューしたダビド・ネレス、サミュエル・エトー・アカデミーとラ・マシアで鍛えられたアンドレ・オナナといった若手がのびのびと自らを表現。今シーズンから加入したドゥシャン・タディッチの好影響を受けて、特大の才能をついに本格開花させているハキム・ツィエクらが繰り出す洒脱な攻撃は実に爽快だ。

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