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「FWとして勝負できるクラブへ」
岡崎慎司が移籍を決意するまで。
posted2019/05/01 11:30
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph by
Tomoko Nagakawa
「またゼロからの出発になる」
先日33歳の誕生日を迎えた岡崎慎司は、現在の心境をそう語った。今年初めに今季限りで契約が満了するレスターからの移籍を公言。今季は20試合に出場しているが得点はなく、その大半が途中出場で出場時間もわずかしかない。
2015年夏にレスターへ加入した岡崎は、プレミア最初のシーズンで“奇跡の”リーグ優勝に貢献。攻守を繋ぐ仕事や前線からの守備を担い、ハードワークなどを高く評価された。高い身体能力を持つ選手との競争で自身が活きる術として、誰もしない仕事を選択した結果だった。ジェイミー・バーディーやリヤド・マフレズといった選手たちが輝いたのには、岡崎の存在が大きかったと言えるだろう。
この優勝を機にレスターは、ビッグ6に次ぐ存在へと飛躍する。才能豊かな選手の獲得が容易になり、監督交代も相次いだ。当然、サッカー自体にも変化が生まれる。だが、そんななかでも岡崎に求められる役割は、ボールを落ち着かせたり、守備を安定させたりと、これまでと変わりなかった。
レスターではFWとして勝負できない。
ゴールは期待されていない。だから、いつも途中交代を命じられた。期待されるだけの結果を残していない。不甲斐なさとやりきれなさを抱えながらも岡崎はブレなかった。
自分の仕事をまっとうしたうえで、点を獲る。岡崎はゴールへのこだわりを捨てずに戦った。昨シーズンは前半だけで6ゴールをマークしたものの、その後は負傷離脱してしまい、点取り屋としての立場を得ることはできなかった。結果、今シーズンの岡崎はMFのようなポジションでの出場が続いている。
「今季はMFでの途中起用が多いけれど、実際、本職の巧さと比べたら僕はMFではないと思い知らされる」と語る岡崎が移籍を決意したのは、「レスターではストライカーとして勝負できない。FWで勝負できるクラブへ」と考えたからだ。