菊池雄星の「Stand Up」BACK NUMBER
菊池雄星が考える「僕の役割」。
メジャーで手に入れた新しい野球観。
text by
菊池雄星Yusei Kikuchi
photograph byNaoya Sanuki
posted2019/04/25 11:45
6度目の登板でメジャー初勝利を手にした。菊池雄星の戦いは、野球界そのものにつながっている。
練習が遅れてでも議論を大切にする。
そして、ミーティングで最後に「何か意見がある人?」とコーチが言うと、必ず選手は手を挙げて議論が始まります。
時にはコーチの意見に反対する選手もいて、議論が深まり、それによって練習時間が遅れる事も度々ありました。日本では見ない光景でビックリしました。
例えばコーチが「これからは高低の出し入れが大切だからインハイのストレートを練習して」といっても、ある選手は「俺は横の揺さぶりで勝負するから必要ない」とハッキリ言います。
また、「メジャーで結果を出すために大切なことは?」という議題の時は、それぞれの意見を言い合って、かなり盛り上がりました。「自分を持つこと」、「客観視すること」、「自分を知ること」、「ストロングポイントを磨くこと」、「ルーティンを持つこと」など議論は白熱しました。
その様子を見ていて感じたのは、みんなが1つになるような環境作りをしているのだなということです。メジャーリーグというのは、毎年のように選手が入れ替わっていきます。僕もルーキーのようなものですから、みんなの前で話すことでどういう人間かを知ってもらうチャンスにもなる。
それがわかっているからか、選手もスタッフもミーティングの時間を大切にしているように感じました。
練習方法さえも、個人に任される。
そしてメジャーリーグでは、あらゆることが個々の選手の判断に任されています。全体練習以外の時間では、自分で必要がないと感じた選手は練習をしませんし、一方では朝早くに来て、ウォーミングアップをルーティンにしている選手もいます。練習時間が短い分、それぞれが考えてやっています。
ミーティングもそうですが、キャンプに参加するまで知らなかったことは思った以上にありました。
キャッチャーは、朝早くから黙々とキャッチング練習をしていますし、野手はティーバッティング、投手はシャドウピッチングなどを練習前からやっています。ものすごく基本的なことですが、自分のルーティンをしっかり守って淡々とやる能力は、一流の選手が共通して持っていることなのかもしれません。
メジャーリーグの全体練習時間は短いので、日本の選手よりも練習しないんじゃないかと思いがちですけど、全体練習以外の時間が彼らにとって本当の練習なのだなと思います。その様子が報道されることは少ないですが、選手はみんな集中してやっています。
僕は言葉がまだ完璧ではないので、他の選手が何をトレーニングしているかまではわからないことも多いんですが、彼らを見るのはとても面白いです。うかつに近寄れない雰囲気の選手も多くて、「すごく集中しているんだな」と感じます。
選手によって練習の仕方も全然違って、それぞれがいろんなことをしています。僕が同じことをやるかどうかは別として、その発想が面白いです。