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<Dear Ichiro>
大谷翔平「僕が追いかけなかったら」

posted2019/04/23 15:00

 
<Dear Ichiro>大谷翔平「僕が追いかけなかったら」<Number Web> photograph by AFLO

イチローが選手登録を外れた翌日の'18年5月4日、大谷が挨拶に行くとイチローは逃げた。

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石田雄太

石田雄太Yuta Ishida

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AFLO

「世界一の選手にならないといけない」 引退会見で“後継者指名”を受けた24歳。 世代を超えた夢の対決は寸前で叶わなかったが、二人の先駆者は確かな邂逅を果たしていた。

 逃げるほうも逃げるほうだが、まさか、すかさず追いかけるとは――。

 2018年5月4日。

 この日、シアトルではエンゼルスとマリナーズとの、シーズン初めての試合が行われることになっていた。メジャー18年目のシーズンをマリナーズで迎えていた44歳のイチローと、メジャー1年目、23歳の大谷翔平は、互いに初対決を楽しみにしていた。しかしその直前、イチローがメジャー25人枠を外れ、会長付き特別補佐としてチームに同行することになったため、残念ながら二人の野球人生、初の対決は叶わぬ夢となってしまった。

 しかし、その試合前のことだった。

 この日、5番DHでバッターとして出場する予定 だった大谷は、2日後の先発に備えて試合前のブルペンへ入ることになっていた。だから、チームの全体練習よりも前にグラウンドへ出て、レフト側でキャッチボールを行っていたのだ。

 そこへイチローが現れた。一塁ベンチを飛び出し、大谷とは反対側のライト側でウォーミングアップの準備を始めた。当然、大谷はそれを察知する。しばし様子を窺い、大谷はやおら走り出した。イチローと大谷、公の場での初めての邂逅に二人の様子を注視していたメディアが色めき立つ。

 すでにお馴染みのこのシーン、イチローにとっては見事なアドリブだった。背後から走ってくる大谷のことをロビンソン・カノーやディー・ゴードンがイチローに伝える。同時に彼らは「まだまだ、まだ振り向くな」とおもしろがって囃し立てた。その瞬間、イチローの脳裏にはいろんなオプションが駆け巡る。そのときのイチローが真っ先に考えたのは、万が一にでも大谷にケガをさせてはいけない、ということだった。

「そりゃ、そうですよ。だから右か左か、どっちに振り向くかということは大事でした。翔平がいるほうに振り向いて、ぶつかるわけにはいきませんからね」

この記事は雑誌『Number』の掲載記事です。
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