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東野圭吾のスノーボードへの愛が
オリンピアン達を熱くした!
text by
秋月透馬(文藝春秋)Toma Akizuki
photograph byShigeki Yamamaomto/Yoshifumi Shimizu/Yoshi Josef Toomuch
posted2019/04/21 09:00
第2回スノボードマスターズは、トップで活躍するスノーボーダーたちが集結。角野友基選手も見事な滑りを披露した。
東野「スタッフの喜ぶ姿が嬉しかった」
東野氏は大会をこう振り返る。
「第1回の大会から会場が変わったこともあって、前回のノウハウを生かせず、大会の準備は大変だったと思います。スタッフには本当に頭が下がります。
表情を見ていても、選手たちはすごく楽しんでもらえたんじゃないかと思っています。『ド素人の道楽』として、『一番スノボがうまいやつを決めようぜ』と始めたことですが、この舞台で、選手だけでなく、スタッフも楽しんでくれたことが、なによりも嬉しい。
スノーボードに出会えたおかげで、雪山を舞台にした小説も書くことができました。2度目のSBMも成功しましたし、大好きなスノーボードに、少しでも恩返しできたのかなと思います」
スノーボードへの恩返し。
東野氏の「思い」は確かに届いていた。
2日目のバンクドスラロームの会場のコースサイドには、真っ黒に日焼けした男たちが、歓喜する姿があった。初日のフリーライディング+ジャンプを採点した大会のジャッジだった。
ヘッドジャッジを務めた関貴英は、猛スピードでコースを滑り降りる選手たちを、ぐるぐると腕を回しながら、鼓舞していた。
なかでも、「X GAMES」で戦う角野選手のバンクドスラロームの滑走には、「おー、むちゃくちゃはやい」と叫んでいたという。
国内で活躍するベテランライダーと、世界を舞台に活躍する若手選手たちが一堂に会し、「一番上手いやつ」を決める戦いは、スノーボードを愛するものたちにとって、至福の時間だったに違いない。
角野「負けてこんなに嬉しい気持ちになるなんて」
競技を終えた角野選手は、こう語ってくれた。
「これまで、どんな大会も優勝するために出ていたし、2位なら悔しかった。でも、これだけのメンバーが集まって、一緒に滑って、一番上手いスノーボーダーを決められたことが嬉しい。今回だけは2位に納得しています。負けて、こんな嬉しい気持ちになったのは初めてですよ。
僕は今、オリンピックに出ている十代の選手たちに伝えたいことがあるんです。
動画をみて、ジャンプだけを練習するのもいいけれど、雪山を滑って、どれだけ上手く滑れるかどうかを極めるのが、本来のスノーボードだと思うんです。若いアスリートたちも、二十歳になったらこの大会に出場して、『スノーボードがうまいかどうか』で勝負してみてほしい。それで負けたらいいと思う。
先輩たちのすごい滑りを見たら、新しい世界が広がるはずだから。20メートルのジャンプを飛ばなくても、少しのずれもない美しいヒールターンを決める気持ちよさを知ってほしい」
オリンピアンにして、「X GAMES」の勝者となったアスリートをここまで熱くしたスノーボードマスターズ。東野圭吾は、「小説も面白い」が、“草大会”を企画しても、最高の「エンターテインメント」を作り出したのだ。
東野圭吾インタビュー
https://books.bunshun.jp/articles/-/4572
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