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ユース出身選手の帰還を実現させた、
Jクラブと大学が結んだ10年間。
text by
平野貴也Takaya Hirano
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/04/16 07:00
大学と湘南を経て、今季“古巣”に戻ってきたMF石川俊輝。大宮アルディージャは育成年代でも好成績を残すなど、強化が実を結び始めている。
強化が実り始めた東洋大、プロ選手も。
大学側にもメリットがある。
プロの指導を受けられるだけでなく、大宮がスカウト対象としていた高卒選手の情報を得ることが可能になり、よりハイレベルな選手の獲得がスムーズになった。東洋大は、石川が3年生だった2012年に関東大学2部を優勝して1部へ昇格(その後、降格と再昇格を経たが、今季も1部)。昨季は、全日本大学サッカー選手権で初勝利を挙げるなど強化に成功。卒業後にプロへ進む選手も増えている。
選手にとってのメリットとして、プロクラブの目に留まる可能性が拡大することも挙げられる。石川は、大学4年になる前の春休みに大宮のキャンプに参加したことについて「僕らは当時、関東2部で優勝したばかりで、1部の常連ではないのに、東洋大から数人で参加させてもらった。提携しているから実現したことだと思う。プロのレベルを肌で感じられた経験は大きかった」と話した。
トップ昇格は両想いでもタイミング次第。
プロクラブにとって理想の育成は、トップチームへの直接昇格だが、それだけが選手育成ではない。高卒で即戦力ではなくても、将来の可能性は秘めている。また、戦力補強の際には、チーム全体の年齢やポジションのバランスを考慮しなければならず、両想いでも、タイミングが合わないこともある。
大宮は、2014年シーズンに東洋大から石川と同期のDF藤井悠太(横浜FC)を獲得しているが、このときは、センターバックが補強ポイントだった。
「高卒、大卒でタイミングが合わなくても、頑張り続けて成長した選手に声をかける可能性はあるし、常に気にかけている。一方で、私たちは、声をかけたときに『行きます』と言ってもらえるクラブであり続けないといけない。グラウンドとかクラブハウスだけでなく、多くの選手と『人が関わり続けている』環境作りをクラブ全体でやっていくべき」
今季、大学時代の教え子である石川を即戦力として獲得した西脇強化本部長は、東洋大との提携を含め、クラブとして幅広い選手育成を行う意味を訴えた。