サムライブルーの原材料BACK NUMBER
中澤から腕章、中町から8番を継承。
喜田拓也はマリノスの新シンボル。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/04/12 07:00
ポステコグルー体制で大胆なスタイルに挑んでいるマリノス。喜田拓也はそこで新境地を見出している。
ふと思い出すボンバーの言葉。
それぞれの得意なことを最大限に発揮して、勝ちにいく。
これもマリノスの伝統かもしれない。2003、2004年にリーグ2連覇した際、中澤は空中戦ではね返すことに、トコトンこだわっていた。
「僕はうまい部分を求められているわけじゃない。岡田(武史)監督から“自分が得意なことを精いっぱいやれ”と言われていますから」
喜田の話を聞きつつ、昔聞いたボンバーの言葉がふと頭をよぎる。ジュニアユース、ユース、そしてトップと駆け上がってきた彼の根底に、そういったマリノスイズムが自然と受け継がれているのかもしれないと思えた。
「スペシャルじゃない」ところが、実はスペシャルなところ。
周りを見ながら、合わせる力、自分を動かしていく力。ひいてはそれが周りを動かしていく。周囲の得意な部分を連結させる歯車でありつつも、勝利に向かう牽引車であろうとする。
扇原、天野とともに主将として。
一昨年は天皇杯、昨年はルヴァンカップで決勝まで進みながら、2013年度の天皇杯以来となるタイトルを手にすることができなかった悔しさが残る。去年、残留争いに一時足を踏み入れた苦しみもある。
扇原貴宏、天野純とともにチームキャプテンに就任した喜田自身、勝利に対する姿勢を自分のプレーで示すことを何よりも心掛けている。
「影響力のある選手が抜けて、3人体制で(キャプテンに)指名してもらって、チームをどう変えていきたいかというところにもパワーを使っています。去年、苦しみながらもブレずにやってきたからこそ今がある。去年の苦しみを生かすも殺すも自分たちですから。結果に対して強い執着心を持って、手応えどまりではなくて、しっかりと結果につなげていきたい。勝ちに貪欲な集団になっていきたいと思っています」