サムライブルーの原材料BACK NUMBER
中澤から腕章、中町から8番を継承。
喜田拓也はマリノスの新シンボル。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/04/12 07:00
ポステコグルー体制で大胆なスタイルに挑んでいるマリノス。喜田拓也はそこで新境地を見出している。
隠れたファインプレーが多い。
この人はとにかく隠れたファインプレーが多い。
3月10日、川崎フロンターレとのホームゲームだった。前半21分、抜け出した家長昭博のシュートをGK飯倉大樹が弾いた時点で、こぼれ球には後ろから走り込んでくるレアンドロ・ダミアンが最も近い位置にいた。
だがこの日先制点を挙げたストライカーが合わせようとしたところで、鬼ダッシュで追いかけてきた喜田が前に体を入れてクリアしたのだ。一瞬でも気を抜いていたら、シュートを許していたはずだ。
中澤の教えが、受け継がれていた。
失点したら、次の失点をしないように切り替える。あきらめずに戻る。愚直に体を張る。それが中澤の真骨頂であった。
開始早々、GKから喜田につなごうとしたパスがズレたところをさらわれて先制点を許したものの、彼はその失点を引きずっていない。集中力を切らさないで、あきらめずに、愚直に。試合は2-2で引き分けに終わったものの、もしここで追加点を許していたら展開は違っていたように思う。
「佑二さんに限らず先輩の姿勢を」
喜田に感じた、マリノスの伝統。そんな感想を伝えると、彼はこう応じた。
「佑二さんに限らず、先輩たちのそういう姿勢を見てきたからというのはあります。佑二さんで言えば、あきらめないし、こぼれ球に対する反応は速いし、自分たちのセットプレーから守備に入るときでも真っ先に最終ラインに戻っている。勝つために、細かいところまで徹底していました。あの場面、瞬間的に危ないと思いました。どんなピンチであっても戻っておくことが大事だし、そこはポステコグルー監督からも言われています。
僕はスペシャルな選手じゃない。だからこそ、当たり前のことを当たり前にやらなきゃいけないし、頑張らないといけない。それこそが得意なことだし、自分の役割だと思っています。みんなが得意なことを頑張ってやってもらうための、パワーを出していきたい。それがサッカーの面白さじゃないですか」