酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
斎藤佑樹も経験した「オープナー」。
評価は難しいが、経費削減の効果も。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2019/04/11 10:30
今季2戦目で「オープナー」の役割を与えられた斎藤佑樹。結果は2回途中3失点だった。
ロングリリーフの進化形になるか。
こういう「ロングリリーフ」は形としては昔もあったが、ほとんどは先発が大量失点をして降板したのちに投げるというもので、敗戦処理に近い。優秀な投手の持ち場とは言えなかった。しかしヤーブローはこの持ち場で14も勝ち星を稼いでいるのだ。
キャッシュ監督はヤーブローを「バルクガイ」と呼んだのだという。従来はロングリリーフのことだが、こういう起用法を特定するネーミングになるかもしれない。
NPBでも今季は日本ハムの斎藤佑樹、加藤貴之が先発して短いイニングで降板している。「ショートスターター」とか「オープナー」と言われているが、日本ハムの場合、そこまでしっかりプランニングをしていたとは思えない。
斎藤は2回途中で打ち込まれて降板したが、単なる先発失敗のように思えた。左腕の加藤は2度経験して、それぞれ3回無失点、2回無失点だったが、彼はもともと先発投手だ。そのうえ3回から、本来は先発の金子弌大がマウンドに上がった。
日本での元々の「オープナー」は、「この日は先発投手を使わずに、救援だけでやりくりしよう」という主婦の知恵っぽい発想だが、日本ハムの起用はまだ「やってみよう」の域を出ていない。
それに、オープナーを本格的に起用するのなら、レイズのヤーブローのような「バルクガイ」も作っていく必要がある。それができなければ、単に救援陣の負担が大きくなるだけだろう。
アスレチックスはもっと極端。
レイズの「オープナー」を興味深く見ていたのが、オークランド・アスレチックスだ。「マネーボール」で知られる新しもの好きのビリー・ビーンGMはさっそく「やってみよう」と思ったようで、アスレチックスにもこんな成績の投手ができた。
<リアム・ヘンドリクス 29歳>
先発 8試合0勝1敗 8.2回 防御率2.08
救援 17試合0勝0敗0セーブ 15.1回 防御率5.28
この投手は先発してもほとんど1回しか投げていない。起用法がレイズよりも極端なのはアスレチックスならではか。ヘンドリクスにはオープナーの素質があるとみるべきではないか。
3月17日のMLB開幕シリーズ、東京ドームでの日本ハムとのエキシビションゲームで、アスレチックスはこのヘンドリクスを先発させ、1回で降ろした。以下、ソリア、トリビーノ、ロドニー、バクター、ペティット、トレイネン、モンタスと計8人の投手をマウンドに上げた。オープナーとはこういうものか、とも思った。