濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
1日3興行開催の“心意気”を残して。
西の聖地「博多スターレーン」閉館。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2019/04/08 10:00
閉館する博多スターレーンでのラスト興行。展示会場担当・金子誠一部長もリングに上がり、昭和50年代から続く歴史に幕を閉じた。
DDT王者・竹下が語った「続き」とは?
UWFで“博多男”と呼ばれ人気を博した中野巽耀(龍雄)も出場したDDTのメイン、博多スターレーン最後の試合はKO-D無差別級選手権だった。王者・竹下幸之介が逆指名した挑戦者はWRESTLE-1の黒潮“イケメン”二郎。コミカルで華があり、なおかつ抜群のプロレスセンスを感じさせる選手だ。
チャンピオンとして「地方でのタイトルマッチ」、「他団体の選手との対戦」を掲げた竹下にとって最高のシチュエーション。4月からフリーになるイケメンにも転機となりうる闘いだった。
場外戦、打撃、関節技とシビアな攻撃を展開したイケメンから竹下が3カウントを奪った技は、切り返しのエビ固め。昨年1月の対戦ではイケメンが丸め込み技(カサドーラ)で勝っているが、今回は竹下が“切り返し合戦”で一段階上回った形だ。
「前回のその先」のフィニッシュを考えていたという竹下は、こう付け加えている。
「前回からその先があったってことは、今回も“to be continued”でしょう。1勝1敗で終わるつもりはないので」
竹下は23歳、イケメンは26歳。「博多スターレーンができた時には生まれてもいない僕たちが最後を締め括った。これは運命的なんじゃないですか」と竹下は言う。2人のライバルストーリーが続けば「2戦目は博多スターレーンで行なわれ、竹下が勝利」という記録と記憶も薄れない。
会場備品のパイプ椅子が「記念品」に。
会場では、備品に貼られる博多スターレーンのロゴ入りステッカーが観客に配られた。DDT終了後には、「緑色の(古い)椅子は持ち帰りOK」というアナウンス。「40年間プロレス専用で使ってきたイス」(博多スターレーン展示会場担当・金子誠一部長)だそうだ。
ということで、この日は夜の博多でパイプ椅子を手にして歩く人が多数、見られたわけだ。知らない人には、ただの古いパイプ椅子。でもプロレスファンには“40年分のプロレスファンの気持ちがこもった逸品”だ。もしかしたら、その椅子は誰かが場外乱闘で使ったものかもしれない。