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日本人F1ドライバーの誕生なるか。
執念の男・松下信治、4度目の挑戦。
text by
島下泰久Yasuhisa Shimashita
photograph byHonda
posted2019/04/05 15:00
バーレーンでの開幕戦はトラブルもあり、上位に食い込めなかった松下信治。スーパーライセンス獲得に向けた、「あきらめない男」の戦いに注目だ。
開幕戦は「何とか完走」。
「これまでの公式テストではレースを見据えたセッティングに集中してきたので、マシンの状態はいいと思います。チームはとてもいい雰囲気だし、自分に合っている。自分自身の弱点、穴の部分もしっかり埋めてきたので、不安材料はないですね」
迎えた開幕戦のバーレーン。初日の練習走行、そして予選の終了後、松下はこう話していた。実際、予選は6番手につけて期待させた。
だが、土曜日のレース1決勝はチームがセッティングを外したこともあってタイヤ摩耗に苦しみ、一旦は2位まで順位を上げるも最終的には9位に終わる。そして翌日のレース2も、今度は駆動系のトラブルなどがあり12位で何とか完走するにとどまった。
「勝てる時に勝つのはもちろん、勝てない時も安定してポイントを稼いでいくというのが今年しなければならないこと。それができなかったのは残念ですが、まだシーズンは長いので諦めずにやっていきます」
速いのは当然、負けっぷりも大事。
冒頭に、F1ドライバーになるためには、速さだけがあればいいわけではないと書いた。これは逆に言えば、速さは当然あるべきものであり、F1チームや関係者が見ているのは、更にその先の部分だという意味でもある。
ホンダのモータースポーツ部長として松下のF2復帰を決め、この4月からはF1マネージングディレクターに就任した山本雅史氏は言う。
「勝ちっぷりはもちろん、大事なのは負けっぷりです。たとえば今回は勝てないとなった時にも、ポイントをこぼさずに取ってくると切り替えるといったことですね。またチームとの関係も、いかに自分のためにやる気になってくれるかという雰囲気をドライバーが作っていかなければいけません。メディアとの関係だってそうでしょう。スポンサーさんに対しても、もちろん同様です」