モータースポーツPRESSBACK NUMBER
日本人F1ドライバーの誕生なるか。
執念の男・松下信治、4度目の挑戦。
posted2019/04/05 15:00
text by
島下泰久Yasuhisa Shimashita
photograph by
Honda
F1ドライバーになるためには、速さだけがあればいいわけではない。まず資格として、下位カテゴリーで実績を重ね、F1マシンでのテスト走行を行なうなど、いくつかの条件をクリアして、スーパーライセンスを取得する必要がある。
何より重要なのは、世界のモータースポーツの統括団体であるFIAが、それぞれの選手権ごとに定めたスーパーライセンスポイントを積み重ねて、過去3年を遡っての合計で40点に到達することだ。現状、それには日本で実績を重ねるよりも、ヨーロッパに渡り、結果を出す方が近道となる。
たとえば日本の最高峰レースであるスーパーフォーミュラで年間チャンピオンを獲得して、得られるのは25点。2位なら20点、という具合に9位までにポイントが与えられるが、いずれにしても1度チャンピオンを獲っても、それだけでは足りない。
一方、主にヨーロッパで開催されているFIA F2、FIA F3といったフォーミュラカーレースには、F1へのステップとしてこれらのカテゴリーを盛り上げたいというFIAの政治的な思惑もあり、より多くのポイントを獲得できるチャンスがある。F2の年間チャンピオンは40点を獲得でき、それだけでF1への途が一気に開ける。F3でも30点が獲得できるから、前年に他のカテゴリーで10点以上を稼げていれば、やはり資格を満たすことが可能になる。
異例の存在、松下信治。
日本人F1ドライバーの誕生を目指して、今年ホンダはこのFIA F2に松下信治、F3に角田裕毅と名取鉄平という計3人の育成ドライバーを送り込む。3人は現在、それぞれ10点、12点、10点のスーパーライセンスポイントを持っており、今年それぞれの選手権で上位に入れば、F1へと一気に近づく。
この3人の中でも異例の存在と言えるのが松下だ。何しろF2(改称前はGP2)への参戦は初めてではなく、2年ぶり4シーズン目となるのである。
ホンダの契約ドライバーである松下は2014年に全日本F3チャンピオンを獲ったのち、'15年からGP2、のちのFIA F2へと参戦した。当然、目指したのはスーパーライセンスの獲得だが、'17年までの3年間のランキングは9位、11位、6位に留まり、スーパーライセンスポイント40点を達成することができなかった。そこでホンダは'18年、F2に別の2人のドライバーを送り込むことを決め、松下には日本のスーパーフォーミュラのシートが用意された。