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トヨタ・ハイブリッド車がル・マン制覇。
「レースで使えるの?」からの12年間。
posted2018/06/19 17:00
text by
大串信Makoto Ogushi
photograph by
TOYOTA
24時間レースも残り30分、最後のピットを終えた7号車小林可夢偉が2番手でマシンをコースに戻した。後方には首位の8号車中嶋一貴が走っているという位置関係になったが中嶋の視界に可夢偉の姿はまだ見えない。
可夢偉は中嶋が追いついてくるのを待つためにペースを調節する。2台揃ってフィニッシュするための準備だ。3番手とは10周以上の差がついており、あとは走りきるだけだった。
2台の間隔は徐々に縮まり、レースも残り5分となって中嶋の前方に可夢偉の後ろ姿が見え始めた。
中嶋はしばらく可夢偉の背後で走り、最後の1周というところで前に出た。
24時間を経過した次の周、2台のマシンはほぼ並んでチェッカーフラッグを受けた。トヨタにとって1985年にル・マンに初めて出走してから34年目、2012年にハイブリッドカーによる挑戦を始めてから7年目にしてついに成し遂げた優勝であった。
トヨタの独り相撲という大きな勘違い。
アウディに続きポルシェが撤退したため、今年のル・マン24時間レースのLMP1クラスでハイブリッドシステムを搭載して闘うのはトヨタのみで、その他のマシンは通常のガソリンエンジンを搭載したマシンだった。しかもメーカーのワークスチームとしてマシンを開発し乗り込むのはトヨタだけで、その他はいずれもプライベーターが市販のエンジンとシャシー組み合わせて開発した、いわば「既製品」を使うチームである。
これをもって今年のトヨタは大人げない独り相撲をしただけだと揶揄する声もあるにはあるが、大きな勘違いである。
24時間レースはそういうものではない。