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鳥栖の守護神・大久保択生は
「失点」の恐怖を乗り越えた。
posted2019/04/04 11:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
すべてのGKにとって「失点」という2文字はあまり聞きたくない言葉だろう。プレッシャーであり、恐怖の対象かもしれない。
さらに、それが若ければ若い選手ほど、「失点をしないこと」に強迫観念を生み出してしまうこともある。
結果として、プレッシャーがプラスに働くこともあるが、いざ失点という現実を突きつけられた時に、前向きに捉えることは困難となる。ましてや、大量失点だったり、複数試合で続くと、精神的な負担は想像以上のものになる。
「よくGKに向けられる言葉として、『GKが良ければ点は取られないよ』と『GKが点を取られなければ負けないから』があるのですが、これまでこの言葉が大きなプレッシャーになっていました」
今季からサガン鳥栖に加入した29歳のGK大久保択生にとっても、「失点」は恐怖だった。だが、月日が流れ、出会いと経験を重ねていくにつれ、この恐怖に対する向き合い方は大きく変わっていった。
長崎で培った客観的な視点。
大久保は2008年に帝京高校からJ2の横浜FCに入団すると、2年目から早々に不動のレギュラーの座を掴んだ。しかし、翌'10年はリーグ7試合の出場に留まり、'11年にはジェフユナイテッド千葉へ移籍。ここでは3年間在籍したが、リーグ戦の出番は1度もやってこなかった。
不遇の時間から抜け出せない大久保は、'14年にV・ファーレン長崎に移籍。ここでようやく出番を掴み、'15年に正GKの座を確保。
「最初の頃は、『なんで俺を使わねぇんだよ』と思っていた。でも、試合に出られなかったことや正GKから2番手に回ったこと、さらにはメンバー外と、いろんな経験をしたことで、物事を客観的に見られるようになった。それができるようになったのは長崎で試合に出続けられるようになってからですね」