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オープナーは日本球界に浸透するか。
実現条件と挑戦に対する日米格差。 

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小西斗真

小西斗真Toma Konishi

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posted2019/03/29 08:00

オープナーは日本球界に浸透するか。実現条件と挑戦に対する日米格差。<Number Web> photograph by Getty Images

昨年5月19日のエンゼルス戦で「オープナー」として初回のマウンドに上がり、1イニングを三者三振に抑えたレイズのクローザー・ロモ。

1回は先発投手に任せてはいけない。

 なぜならばMLBでは1回の防御率が最も悪いからだ。

 理由の筆頭は、1回は好打順(1番)から始まる。しかし先発投手は2回以降のペース配分も頭に入れておかねばならないから、配球を駆使せず、できれば単調な投球でスタートしたいからだと考えられる。

 果たしてこうした新たな投手起用はNPBにも輸入されるのか。

 前提条件は満たされている。昨シーズンはセ・リーグ(520得点、531失点)、パ・リーグ(481得点、470失点)ともにイニング別では、2番目に大きく差をつけて1回が最多だった。MLBと同じくデータ上、1回は「先発投手に任せてはいけないイニング」になっているのだ。

 先ほども理由を推測したが、長い野球の歴史が始まった瞬間から「1回は1番から」と決まっている。

 一方で、投手の分業化は進み、今や日米問わず先発完投を求められていない。

 つまり、フルマラソンから30キロレース程度に短縮されているにもかかわらず、1回は明らかに打高投低であり、きれいに立ち上がることはスターターの重大な課題として横たわっている。

日本での導入はまだ先か。

 実現するための条件はそろっているのだが、筆者はNPBが輸入に踏み切るのはまだ先だと感じている。

 まず、先発して1回を投げるだけでは敗戦投手になることはあっても勝ち星やホールドは絶対につかない。想定されていなかったので、現時点では記録上まったく報われない。

 また、ある現役の投手コーチは「そういう役割を任されている投手(先発のこと)がどう思うかですよね。そのために準備しているのに、リリーフがいくわけだから。それにメジャーとでは試合数が違います。それを5人のスターターで回している。6人の日本がオープナーをやってみて、たとえば3点取られたとします。絶対にホラ、見ろって意見が出てきますよね」と否定的だった。

 この考えは先発投手からその役目を取り上げてどうするという筋論にすぎない。その役目を果たせていないから救援を先発させるという逆転の発想が生まれたわけで、その反論としては成立していない。

 ただ、MLBより19試合少なく、延長戦は12回まででローテーション投手は1人多い。投球数の徹底管理を含め、リーグのシステムの違いは、導入に積極的になれない理由ともいえるだろう。

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