ファイターズ広報、記す。BACK NUMBER
田中賢介、シーズン前に引退表明。
功労者の花道は日本ハムの活力に。
posted2019/03/29 12:05
text by
高山通史Michifumi Takayama
photograph by
Kyodo News
潔い覚悟を、垣間見た。すがすがしかった。
2019年の球春が幕を開ける直前。田中賢介選手と、少し会話する時間があった。
昨年12月の契約更改後の会見で、今季限りで引退することを表明して臨む1年。最後のシーズンを控えた心境を、尋ねた。
「いつものシーズン前と変わらないですよ。サバサバしています。あと半年ですね」
意外にも、軽快に笑っていた。よどみなく、言葉をつないでいった。
日米でプロ生活20年目の節目となる1年で、バットを置く。年明けから、過ぎていく時間がすべて「現役最後」となるのである。自主トレ、春季キャンプ、オープン戦……。そして、公式戦開幕もそうである。これまでとは違い、もう繰り返すことがない1年を刻んでいく。
「カウントダウンをしている、という感覚はあります。オープン戦で訪れた球場は『もう、ここに来るのは最後だな』とか思いますしね」
ずっと考えていた「引退」。
ただ前段のように、その姿は見ていても例年と変わらない。札幌ドームのクラブハウスのロッカーは、幼少時から親交のある同い年の鶴岡慎也選手兼バッテリーコーチと隣同士。談笑しているシーン、雰囲気に違いはない。しんみりとしている周囲が、拍子抜けするほどである。
「昨年から、ずっと『いつ引退しようか』ということは考えていましたからね。心の準備はできていました」
仮に、決意していたとしてもこれほど早くオープンにすることはレアケースである。大リーグで同様の事例はあるが、日本球界では珍しい。引き際を自らが設定する。それを球団も了承をして、公表するということになると、さらに前例を探すのが困難である。