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貴景勝が戦うのは白鵬か、10代か。
相撲界で中卒入門がトレンドに?
text by
西尾克洋Katsuhiro Nishio
photograph byKyodo News
posted2019/03/27 06:30
両親の前で大関への昇進を決めた貴景勝。時間は若い彼の味方だと思われていたが、10代の追い上げも加速している。
幕下で10代の力士が急増している。
では、横綱大関に対抗して毎場所のように優勝争いに絡めるようになれば、貴景勝の時代が転がり込んでくるのだろうか。
近い世代のライバルが御嶽海と逸ノ城しかいないとなると、現在の実力と年齢、伸びしろを考慮すればその可能性が高いと予想するのは自然だ。さすがに白鵬といえど、数年後に同じ実力を保つことは相当困難だろう。緩やかに新時代の力士へと覇権は移り変わっていく。
だが実は、貴景勝の覇権が来ると言い切れない変化が水面下で起きている。
現時点では貴景勝より下の世代で関取なのは同部屋の貴源治と貴ノ富士くらいだが、幕下に目を向けてみると様子が異なる。今場所は、10代の幕下力士が急増しているのだ。
朝青龍の甥として話題の豊昇龍、貴闘力の息子の納谷、琴手計、塚原、徳田、井上、平戸海といった力士が台頭し、中でも豊昇龍は幕下7枚目で勝ち越しを決めている。少し前まで10代の幕下力士は2~3人で推移していただけに、この急激な変化には驚かされる。
20歳付近でも、幕下筆頭の竜虎、18歳で幕下に昇進した才能がついに開花しつつある湘南乃海、琴櫻の孫で琴の若の息子の琴鎌谷といった力士たちが幕下上位でも結果を残しはじめている。
元関取が幕下に落ちてもやめなくなった。
ここ数年の傾向として、幕下は大卒力士、元関取、叩き上げで20代半ば以降の力士たちがしのぎを削ってきていた。攻めも守りも優れ、あらゆる状況で対応力のある大卒力士、全盛期ほどではないが地力と決め手がある元関取、そして長い幕下経験の中で徐々に幕下で生きる道を見つけてきた叩き上げがそれぞれ持ち味を発揮してきたために、若い力士たちはなかなかそれに対応することができなかった。
加えて元関取が幕下に落ちてからも現役を続行する事例が近年急増したため、その傾向は更に顕著になった。何しろ数場所前は、幕下に元関取が39人在籍していたのだ。若さと勢いだけでは対抗できない彼らの存在が壁になり、幕下に昇進すらさせてもらえなかったというわけである。
だが、若い世代がチャンスを掴みつつあるのが現在の傾向だ。なぜこのような変化が起きたのだろうか。それは、アマチュアで実績の有る力士たちが高卒以下で大相撲の門を叩いているからである。豊昇龍はインターハイで準優勝という実績があり、納谷も国体個人の部で優勝経験がある。琴手計と塚原は埼玉栄高校で納谷と同級生という縁があり、竜虎は元中学横綱という実力者だ。