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前田でもなく、新井でもなく……。
カープの背番号1、鈴木誠也の風格。 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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photograph byKyodo News

posted2019/03/24 11:00

前田でもなく、新井でもなく……。カープの背番号1、鈴木誠也の風格。<Number Web> photograph by Kyodo News

鈴木誠也は2019年からカープの背番号1を担う。そのオーラは前任者・前田智徳に優るとも劣らない。

黒田、新井との出会い。

 '15年に広島に帰ってきた、黒田博樹氏と新井貴浩氏との出会いが転機となった。

 2人の“チームのために戦う姿”は、若いチームに大きな衝撃を与えるとともに、理想を指し示してくれる光だった。

「帰ってきた黒田さんと新井さんが引っ張ってくれて、勝つために必要なことをみんなが教えてもらった」

 2人に引っ張られるように、復帰翌年の'16年に25年ぶり優勝を果たした。

 当時22歳でレギュラーを狙う立場、レギュラーを死守する立場にあった鈴木はまだ、周囲のことよりも、ただ純粋に投手との対戦に全神経を注いでいた。打ち取られればベンチで感情を爆発させ、言葉を吐き捨て、打撃手袋をたたきつけることもあった。

 ただ、レギュラーから主力、そして4番と立場が変わっていくにつれ、心境も変化した。黒田と新井の教えを受け継いだチームも成熟。3連覇した昨年、鈴木の中で方向性が間違っていないことを痛感した。

「自分のためだけにやっても、ただ技術を突き詰めるだけだとつまんないし、しんどいだけ。勝つために何をやらなければいけないか。それが野球の楽しさだと思ったんです。チームのために何ができるかを考えて、必要なんだと思ったものをやって、今がある。その中で自分の技術を上げていこうと。それが成長につながるんだと思います」

“個”がバラバラではいけない。

 強烈な“個”を持つ鈴木が、“チーム”の重要性を感じられたのは、2人の存在があったから。まだ24歳ではあるが、広島では絶対的な主力であり、チームの顔。年齢は違えど、'15年に帰ってきた2人の立場と近づいた。だから、責任もある。

「おふたりがいなくなって、丸さんも抜けた今年は、より“個”が大事になる。みんなが忘れてしまったら、'15年以前に戻ってしまうと思う。試合に出る主力組がしっかりしないといけない。“個”がバラバラになったら厳しい。黒田さんと新井さんが残してくれたものを台無しにしてはいけない」

【次ページ】 孤高でもなく、兄貴でもない。

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