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フランクフルトが驚異の13戦無敗!
チームの大黒柱は“皇帝”長谷部誠。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2019/03/23 17:00
プレー面以外でも抜群の存在感を発揮。長谷部なしでは、現在のフランクフルト躍進は語れない。
チームに欠かせない“眼”。
最後に、我らが長谷部。正真正銘の“カイザー”、もしくはキャプテンマークを巻いた“鬼神”。360度を包囲されるボランチから解放された彼に敵なしです。パス精度の高さはもちろん、特筆すべきは戦況を見極める“眼”ではないでしょうか。
相手プレスをかいくぐり、最も攻撃を促進させるポイントへパスを供給する判断力は、見事の一言。相手にとっては、「ここにボールを入れてほしくない」というエリアへピンポイントで突き刺してくる長谷部のパスワークは苦々しいことでしょう。
読みの鋭さは守備でも発揮されていて、ハイスピードな判断力を駆使して誰よりも速くボールの到達点にポジションを取り、屈強な相手でもスピード溢れる相手でも難なくあしらう。0.1秒でもいいから速く反応する。
これがリベロ長谷部の真骨頂で、対人プレーが連続するドイツで第一線の戦場に立っている理由でもあるのでしょう。
体を使って鼓舞する長谷部。
長谷部が、フランクフルトで絶大な存在感を示す理由は、その強烈なリーダーシップにあります。
味方が少しでも集中力を欠けば怒声が飛び、周囲は自らを律しようとします。ブンデスリーガ第24節ホッフェンハイム戦では、後半終盤に1-2のビハインドからアレが同点ゴールを決めた瞬間に自らを誇示しようとパフォーマンスをしかけると、長谷部が駆け寄って「まだ、逆転を狙うんだ!」とばかりに彼の体を引っ張って帰陣を促しました。
アレが「そうだ、そうだった!」と踵を返す姿に、今の長谷部がチームメイトからいかに畏怖の念を抱かれているかを感じました。
また、第26節ニュルンベルク戦を1-0で制した後のミックスゾーン。チームメイトの子どもとおぼしき少年がフランクフルトのユニホームを身にまとって誰かを探しています。何人かの選手をやり過ごした後に長谷部の姿を見つけると、一目散に駆け寄って「ここにサインして」と胸の辺りを指差しました。
柔和に微笑んだ背番号20はスラスラとペンを走らせた後、少年の頭にポンと手を置いて颯爽と去っていきました。