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フランクフルトが驚異の13戦無敗!
チームの大黒柱は“皇帝”長谷部誠。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2019/03/23 17:00
プレー面以外でも抜群の存在感を発揮。長谷部なしでは、現在のフランクフルト躍進は語れない。
前線には“爆弾小僧”。
そして前線。ルカ・ヨビッチ、セバスチャン・アレ、アンテ・レビッチの3人はドイツ国内のみならず、ヨーロッパ全土を席巻する勢いで成長を果たす超攻撃的3トップです。
ヨビッチは21歳。成人を迎えたばかりなのに、そのふてぶてしさと度胸、筋骨隆々の体格はプロレスラーのようです。先日ミックスゾーンで横を通りかかったときやや背が低く感じたので、ジュニアヘビー級でしょうか。かつて、初代タイガーマスクと名勝負を繰り広げた“爆弾小僧”ダイナマイト・キッドに似ているようにも感じます。
そんな彼の最大のストロングポイントは正確無比なシュート技術。たとえ相手守備陣が数センチの隙間しか空けなくても、その極小スペースを活用して体を様々な角度に捻り、巧妙にボールコンタクトして相手ゴールへ入れ込んでしまいます。よくよく観察すると、パワーよりも技術に特化したプレーを突き詰めているように思えます。つまり屈強な体躯を、精密な技術を披露するための基軸として活用しているように思えるのです。ちなみにヨビッチは、35歳の長谷部に対してタメ口だそうです。
「高さ」のアレ、「突進力」のレビッチ。
アレは驚異的な空中戦能力の持ち主で、後方からのフィードを足元に収めるか、味方へつなぐ絶品のポストワーカーとして機能します。今季の後半戦、最後尾の長谷部のビルドアップが脅威とスカウティングした相手チームが、前線からのプレス&チェイスを強めて対応してきましたが、長谷部はショートパスの多用からアレ目がけたロングフィードへと切り替えて状況打開を図りました。
この戦略は見事にハマり、今では相手チームが長谷部の長短に渡るパスを警戒せざるを得ず、以前にも増して混乱しているようです。最前線のアレは攻撃の一翼を担うだけでなく、長谷部らが実行する後方でのビルドアップにも高い影響力を及ぼしています。
そして最後がレビッチ。彼はボールを保持していようがいまいが、とにかく縦への突進、突進の連続で、ひたすら相手ゴールへ向かいます。まさに“重戦車”、“ブレーキの壊れたダンプカー”。
特にカウンター能力に秀でていて、彼のドリブルが始まると、コンメルツバンク・アレナが熱狂のるつぼと化します。先日のニュルンベルク戦では負傷から復帰を果たして途中出場したのですが、そのときに起こったスタンドの大歓声は凄まじいばかり。サポーターのユニホームの背中に『4・REBIC』と書かれている率も高く、おそらく現在のフランクフルトで最も信頼を集めるスターだと感じます。