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調査報告書から読み解くパワハラ問題。
「再出発」に必要なリーダーの存在とは。 

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池田純

池田純Jun Ikeda

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posted2019/03/25 07:00

調査報告書から読み解くパワハラ問題。「再出発」に必要なリーダーの存在とは。<Number Web> photograph by AFLO

既に反省文を提出したという宮川紗江。現在は高須クリニックの支援を受け、徳洲会体操クラブで練習を行なう。

なぜ相談窓口を利用しなかったのか。

 もうひとつ、こんな理由も。

協会に設置されている相談窓口「パワハラ・セクハラ相談コーナー」を利用せず、協会への事前相談や許可を得ないまま記者会見やテレビ出演をしたことは、メディア活動に関するガイドラインに違反する疑いがある。(原文ママ)

 この「パワハラ・セクハラ相談コーナー」は協会顧問弁護士のもとに設けられ、通報があった場合は『顧問弁護士同席の下、協会専務理事において,(1)相談者への聴き取り,(2)加害者とされる指導者及び所属長への聴き取りが行われる』(第三者委員会の調査報告書より)とあります。

 今回、宮川選手が相談コーナーを使わず、また協会に伝えることなく会見を行わざるをえなかったのは、協会への不信感が募り、頼ることができないところまで追い込まれていたから、と考えるのが自然でしょう。12月の報告書の中にも、こんなくだりがあります。

 本調査は,宮川選手の記者会見に端を発したものであるが,そもそも18歳の宮川選手が記者会見という通常は考えないであろう方法によって今回の問題を訴えようとしたのは何故か,を分析する必要がある。
 当委員会は,それは宮川選手に協会に対する信頼がなく,協会に相談しても問題の解決に至らないと考えたことによると思われる。

 にもかかわらず、協会は宮川選手の、自身で会見を開かざるをえないほどに追い込まれてしまった心情を酌むことなく、協会のガイドラインを守らなかったことを処分の対象としている、といえます。

塚原夫妻は「任期満了による退任」

 それに対して、処分内容は、塚原千恵子強化本部長の不適切な言動があった、と指摘しつつも、「臨時評議員会(平成30年12月22 日)での謝罪」、塚原光男副会長には「臨時理事会(平成30年12月10日)および臨時評議員会(平成30年12月22日)での謝罪」。さらにそれぞれ、職務の「任期満了による退任」でした。

 処分がくだる前の謝罪で終了、その後は任期満了によって退任。ある種の穏便な結末で、なんとも不思議な形になっています。

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宮川紗江

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