フランス・フットボール通信BACK NUMBER
なぜカタールはアジア王者に?
世界レベルの育成計画始めた15年前。
text by
ロベルト・ノタリアニRoberto Notarianni
photograph byVincent Michel/ L'Equipe
posted2019/03/19 07:30
アジアカップ決勝で日本代表が敗れたのは決して偶然ではなかった。いまアジア各国のレベルは急上昇しているのだ。
偶然でなく、長年の努力の結果。
アジアカップのトロフィーは、例えば過去3度アジアで優勝し、2015年の世界選手権で2位になったハンドボールのそれよりも、カタールの人たち――特に要人たちにとって価値が高い。
何故ならばそれは長期にわたる努力と投資の賜物であり、選手の安易な帰化と即席の強化の結果などではなかったからだった。
バルサなどの一流クラブの育成システムを継承。
スタートはアスパイア・アカデミーの創設に遡る。
ドーハ郊外に莫大な資金と最新の設備を投入して、世界最先端のスポーツ大学ともいえる施設をカタールが設立したのは、今から15年前のことだった。このアスパイアのサッカーセクションを活用して、カタールはとてつもなく野心的な育成組織を作りあげたのだった。
ヨーロッパの3つのクラブ(ベルギーのオイペンとオーストリアのラスク・リンツ、スペインのクルトゥラル・レオネッサ)を買収し、その育成センターに選手を送り込む一方で、《フットボール・ドリームス》と名づけた大規模なスカウトシステム――カタールおよび国外の有望な若手を発掘し、それぞれを適切なセクションに所属させる――を作り出したのだった。
すべてはバルセロナでマシアの育成担当であったジョゼップ・コルメルや、ビルバオで育成に携わっていたエドルタ・ムニアといった、スペイン出身の育成のエキスパートたちに支えられていた。
もちろんフェリックス・サンチェス・バスの役割も忘れてはならない。
バルサのマシアで10年を過ごした後、2006年にカタールに赴任した彼は、ユースの最若年からA代表までのすべてのカテゴリーを指導したのだった。