スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
1番大谷翔平と2番トラウト。
2人の至宝を生かすための提案。
posted2019/03/16 11:30
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
AFLO
フィリーズと超大型契約(13年総額3億3000万ドル)を結んだブライス・ハーパーの発言が論議を呼んでいる。論議というのもちょっと大げさだが、ハーパーは友人のマイク・トラウトに向かって、「2020年にFA資格を取ったら、一緒にフィリーズでプレーしようぜ」と呼びかけたらしいのだ。
それくらい、いいじゃないか……と私は思うが、タンパリングだと指摘する声もあるから世間はむずかしい。これはまあ、トラウトの置かれている状況にも関係があるだろう。
トラウトはエンジェルスの至宝だ。大リーグ全体で見ても、特級品の逸材だ。1991年8月生まれだからまだ27歳なのに、リーグMVPをすでに2度獲得している。
ところが近ごろは「史上最大の宝の持ち腐れ」と揶揄する声が高い。所属するエンジェルスの成績がパッとせず、せっかくの大器を生かしきれていない印象が強いからだ。
トラウトが生きない打線の並び。
トラウトが大リーグデビューした2011年以降、エンジェルスは1度しかポストシーズンに進出していない('14年、ALDSでロイヤルズに3連敗)。最大の原因は投手陣が弱いことだが、最近はトラウトを生かせない「打線のちぐはぐさ」もしばしば指摘される。
たとえば'18年シーズン、トラウトは打率=3割1分2厘、本塁打=39本、OPS=1.088というすぐれた数字を残しながら、わずか79打点しか記録できなかった。'17年シーズンも、OPS=1.071を残しながら、打点は72の少なさだ。初めてMVPに輝いた'14年には111打点を記録しているのだが、以後、100打点の大台に乗せたのは'16年シーズンだけだ。
では、トラウトは、いざというときに打てないのか。いわゆるクラッチ・ヒッターの名に値しないのか。
そうではない。
2018年、走者を得点圏に置いたときのトラウトは、3割4分6厘(78打数27安打、9本塁打、42打点)の高打率を残している。
これは堂々たる数字だ。むしろ問題は、トラウトの前の打者の出塁率があまりにも低いところにある。