【NSBC補講I】 池田純のスポーツビジネス補講BACK NUMBER
W杯出場を決めた日本バスケが、
社会現象になるため必要なもの。
text by
池田純Jun Ikeda
photograph byAFLO
posted2019/03/11 07:30
日本代表のキャプテンを務めるのは篠山竜青。普段はBリーグ・川崎ブレイブサンダースでプレーする。
NBAのような「聖地」があれば。
以前、NBAの選手が日本でプレーしたがらない理由の1つに、アメリカのようなバスケットボールを基軸としたアリーナがないことだと聞いたことがあります。
ベンチマークとなる施設は、アメリカ・ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンではないかと思います。
NBAのニューヨーク・ニックス、NHLのニューヨーク・レンジャースの本拠地であると同時に、音楽コンサートも数多く開催される、世界を代表するアリーナです。最大2万人が入れる、まさに「聖地」といえる存在感です。
また、ロサンゼルスのステイプルズ・センターは、スポーツ、そしてバスケのためのアリーナとして大変魅力的な施設で、個人的にも注目してきました。
東にMSG、西にステイプルズ。アメリカにはそんなアリーナが各地に存在します。
日本にマジソン・スクエア・ガーデンやステイプルズ・センターのような施設ができたら、NBAクラスの選手がプレーしてくれるかもしれない――そうなれば、一度は観に行ってみようかな、となるのではないでしょうか。
一番大きなハードルは予算。
しかしながら、本格的アリーナ設立には、いくつもの大きなハードルがあります。
中でも一番大きなハードルは、予算でしょう。
アリーナの建築費は少なく見積もっても約100億円、そのためには、あくまでも目安ですが、50億円以上の年間収益がないとなかなか厳しいように感じます。ちなみにBリーグチームの収益は多くて15億円ほど。Jリーグの最高収益を誇る浦和レッズは'17年度の収益が約80億円、野球は300億円規模です。
私は以前、川崎ブレイブサンダースの買収に動いたと報道されたことがあります。詳細は契約上語れませんが、その際にデューデリジェンス(資産調査活動)や様々な数字を含めて、日本のプロバスケチームの経営の実態に触れました。
その一環で試算をしてみましたが、夢に満ちて魅力的で、NBAにも認められるようなアリーナを建設するには費用が足りませんでした。
そこで、とある企業に大規模な出資をしてもらう算段をつけていました。
その出資を元にすれば、ある程度「アリーナの実現」の可能性は高かったのではないか、と考えています。しかし多額の出資ということもあり、実際チームを保有したときの株式持分の比率での折り合いがなかなかつかず、買収は残念ながら実現できませんでした。