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米国修行で次々と室内日本記録更新。
中・長距離ランナーの新たな強化法。
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byAyako Oikawa
posted2019/03/10 09:00
BTCのコーチ、ジェリー・シューマッカーと肩を組む遠藤日向(左)と荒井七海(右)。
メダリストに土をつけた荒井のスパート。
荒井が日本新を出した1マイルのレースには、五輪メダリストのニック・ウィリスがドーハ世界陸上の標準記録突破を目指し出場していた。
「設定ペースが僕の自己ベストよりもかなり速かった」と荒井は中盤まで集団半ばに。しかし、ペースメーカーが外れて以降、徐々にウィリスのペースが落ちると、荒井はスルスルと前の選手を交わし、ラスト150mでウィリスを抜き去ると、そのままトップでフィニッシュラインを駆け抜けた。
抜群のレース感覚で、勝利と記録を同時に手に入れた荒井は満面の笑みを浮かべた。
「BTCのチームメイトは皆、僕よりも力があって、自分の良さを見失うこともあったのですが、コーチたちが、僕のラストスパートの強さを引き出してくれる練習を組んでくれたりするのでありがたいです。ウェイトトレーニングもすべてが勉強という気持ちで取り組んでいます」
こう荒井自身が話すように、素直な姿勢で練習に取り組んだ結果が、日本記録、そしてアジア記録につながった。
大迫傑が持つ5000m日本記録を更新。
学法石川高校時代から、スピードランナーとして注目を集めた遠藤は、現在20歳。トラックで世界と勝負するため駅伝が中心となる大学進学ではなく、高校卒業後、実業団を進路に選んだ。
「高校時代から海外で練習したいと思っていました」
そう語る遠藤が、BTCで練習を始めたのは昨年5月。狙った大会で結果を出せず、焦り、葛藤した時期もあった。
昨秋、自己ベストを狙って記録会へ出場したいと訴える遠藤に対し、BTCのコーチは断固拒否。トラック中心の選手たちは秋から冬にかけて体を作り上げるのが慣例。その大事な時期にレースに出るなどとんでもない、それがコーチの考え方だった。
「コーチと意見や考え方が合わず、英語で話し合いをしたこともあります」と遠藤は振り返る。
しかし冬季にじっくり練習を積み、5000mで大迫が'15年につくった13分28秒00を0秒19上回る日本記録を樹立。
「自己ベストが13分38秒なので30秒を切れればいいかなと思っていました。でも400m64秒のペースにはまりました。20秒台は目標にしていたのでうれしかった」と語るが、「安定して記録を出せるように頑張らないと」と気を引き締めるのも忘れなかった。
遠藤と荒井はBTCのチームメイトたちから多くのことを学び、吸収している。