“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
ビジャとそっくりな今季初ゴール。
新潟・矢野貴章のイメージが熟成中。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/03/07 17:30
マルチロールのイメージが強いが矢野貴章の本職といえばFWだ。まだまだ衰える気配はない。
今の状況でも結果を出すこと。
口で言うのは簡単だが、実行するのは難しい。裏を返せばそれを実行できるからこそ、この年齢になってもチームに必要とされる選手なのかもしれない。それに彼は今の立場を100%受け入れたわけではない。
千葉戦のミックスゾーンで、筆者はストレートに「今、この立場は『甘んじている』のか、逆に『チャンスがある立場』と見ているのか、どっちですか?」と聞いてみた。
「もちろん選手たるもの誰もがスタメンで出ることを望んでいるし、僕もそこで勝負したい思いはあります。なので、今のサブのポジションを良しとしているわけではありません。でも、そうなった時(サブに回った時)に『俺はいつでも行けるよ』という状態でいなければいけない。シーズンは長いですし、こういう時もある。今みたいな状況で何ができるかが重要だし、どういう結果を出せるかが大事だと思っています」
ビジャのゴールと重なった。
千葉戦での今季初ゴールは準備を怠らない彼のベテランの矜持、“生き様”が現れたゴールだった。
「あのゴールはビジャが昨日挙げたゴールとイメージが重なったんですよ」
J1第2節のヴィッセル神戸vs.サガン鳥栖、今季から神戸に加入したFWダビド・ビジャがJ初ゴールを叩き込んだ。ビジャは右からのロングボールに対し、ボールが転がるところを予測しつつ前向きに受けようと準備していた。だからDFに当たって転がったボールを引き寄せて、1対1となった相手GKを見て、右に重心をかけた瞬間にゴール左隅を冷静に撃ち抜いた。まさに矢野のゴールはそのシーンにそっくりだった。
「あのゴールをもう何回も繰り返し見たんですよ。一見するとフリーの1対1で簡単そうに見えるけど、きっちりGKの動きを見極めて決めることは簡単じゃない。それに(北海道コンサドーレ札幌vs.浦和レッズの)鈴木武蔵のゴールも予測して動き出して、1対1でGKを抜きにかからずに、GKを見てシュートを打ちきっていた。『自分ならあの状況下でどうしているのか?』と、自分に置き換えながらイメージしていました。
なので(新井)直人がヘディングの体勢に入った瞬間、あそこにボールが転がってくる気がして、ビジャのゴールシーンとイメージが一致したんです。抜け出し方はちょっと違いますけど、はじめのコース取りで相手の前に入りつつ、いいところにボールを置けたので、どちらのコースにも打てる状態になった。そこで落ち着いてGKを見たら、相手GKは僕の顔を見て動けなくなったんだと思う。そのタイミングでシュートを打ちました」