“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
ビジャとそっくりな今季初ゴール。
新潟・矢野貴章のイメージが熟成中。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/03/07 17:30
マルチロールのイメージが強いが矢野貴章の本職といえばFWだ。まだまだ衰える気配はない。
ここ数年振るわない中での責任。
投入から30分あまりで3ゴールに絡み、4-1の快勝劇に大きく貢献した。前線で輝きを放った19番に、新潟サポーターが熱狂しないわけがなかった。それが冒頭のチャントだ。
「去年は本当に悔しいと言うか、なかなか思い描いていたような結果をチームとして全然残せなかった。この悔しさはみんな感じていたし、今季はそれを晴らそうという強い気持ちがあります」
新潟は昨季、1年でのJ1復帰を目指したが極度の不振に陥り、一時期はJ2残留争いにまで巻き込まれた。最終的には16位でフィニッシュしてJ3降格は免れたが、不本意なシーズンに終わった。
アルビレックスと同様に、矢野も苦しんでいた。2度目の新潟復帰を果たした2017年、挙げたゴールはわずか「1」で、チームはJ2降格。自身初の2部でのプレーとなった2018年はリーグ39試合に出場しながらも、5ゴールに終わった。
ベテランとして、プロとして。
2003年、静岡・浜名高から柏レイソルに加入した矢野は、2006年に新潟移籍。J1を戦う新潟のエースとして5シーズンにわたってプレーした。2010年南アフリカW杯のメンバーに選ばれ、1試合出場すると、その夏にブンデスリーガのSCフライブルクに海外移籍し、2012年2月までプレーした。
その後新潟に復帰したが、翌2013年に名古屋グランパスに新天地を求めた。ここでは右サイドバックとしての地位を確立するなど、ユーティリティープレーヤーとして成長を遂げた。2017年に再び新潟復帰。今年でトータル在籍9年目を迎えている。
「自分の年齢的なことも考えると、今日みたいに途中から試合に出て、ベテランという枠の中でチームに貢献することが求められている。それをしないと生き残れないという思いも持っています」
矢野はベテランとして培った経験をチームのために活かしながら、プロサッカー選手としてのサバイバルをこなしている。
「僕らのような年齢、立ち位置になると、結果を出さないと周りは納得しないし、いる意味がない。同じレベルや実力なら、若い選手を使った方がいいと思われてしまう世界。なので“違い”を出していくためには、大事なところで点を取るなど、目に見える結果を出していかないと」