“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
ビジャとそっくりな今季初ゴール。
新潟・矢野貴章のイメージが熟成中。
posted2019/03/07 17:30
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
「俺たちと共に戦おう。矢野貴章、矢野貴章、オメーキメレ貴章!」
雨が滴るフクダ電子アリーナで、アウェイのアルビレックス新潟サポーターからこのチャントが大合唱された。
今年4月で35歳になるベテラン・矢野は、J2第2節となるジェフユナイテッド千葉戦で、試合を決定づける3点目を叩き込み、サポーターに向かってガッツポーズを見せながら、この大合唱を一身に浴びた。
1-0で迎えた61分、矢野はレオナルドに代わって投入された。その4分後に右からのロングキックに対して、FW渡邉新太が胸トラップ。右サイドのMF戸嶋祥郎にパスを出すやいなや、矢野は渡邉新を追い越して猛然とダッシュする。千葉DF増嶋竜也との競り合いを制してボールを受けると、体勢を崩しながらもエンドラインぎりぎりからマイナス方向に折り返した。
この瞬間、矢野はニアサイドに飛び込んだ渡邉新に対し、ファーサイドのMF高木善朗を指差し「フリーがいる!」と叫んだ。渡邉新は矢野の指示通りパスを通すと、高木がダイレクトで豪快に蹴り込んだ。
衰え知らずのスピード、フィジカルの強さとボディバランス。そしてゴール前での冷静さ。矢野が良さを生かし、お膳立てしたゴールだった。
裏への抜け出しで貴重な追加点。
“矢野劇場”はこれでは終わらなかった。
千葉に1点を返され、嫌な雰囲気が漂い始めた89分。矢野は新潟サポーターに再び歓喜をもたらす。相手のヘッドでのクリアがセンターライン付近で拾ったMF新井直人が前方にボールを送り込んだ瞬間、矢野はCB2枚の視界から消え、巧みに裏に抜け出した。
ボールを引き寄せるように右足アウトサイドでボールを前に押し出すと、そのままトップスピードで相手DFを振り切る。そして視界にとらえたGKの重心が左に動いた瞬間、右足インサイドでゴール右隅に突き刺した。
後半アディショナルタイムの4点目も矢野が絡んでいる。戸嶋の縦パスから渡邉新がターンした瞬間、矢野はゴール前で千葉の右CBを引きつける。渡邉新は裏のスペースに抜けてフリーとなった新井にスルーパス。そして新井のプロ入り初ゴールが生まれたのだ。