酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
4番が主砲、を覆す2番打者最強説。
打点で見ると日米の差がくっきり。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2019/03/05 11:30
原辰徳監督が2番構想を示している丸佳浩。カープ時代は主に3番打者だったが、打順変更でどうなる?
大田、青木、ソトという存在。
こういう考え方のチームでは、打線は富士山型ではなく、打点を稼げる選手を1番から3、4番までずらっと並べたい。山型は「連山」あるいは「尾根」にならなければならない。
そういうイメージになる。
昨年のNPBで言えば、日本ハム、ヤクルト、DeNAあたりがそれにあたる。
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日本ハムは大田泰示を2番に据えた。大田は2番打者として78試合に出場して52打点を挙げている。ヤクルトは青木宣親が86試合に出て48打点。DeNAは本塁打王を取ったソトが48試合で44打点。3人ともに犠打なし(青木は1回試みて失敗)。伝統的な2番打者とは違うイメージだ。
この3球団は2番最強打者、初回ビッグイニング型を選択しつつあるといっていいだろう。守備位置も大田と青木は外野手、ソトも内野手ながら一塁手だ。
ただこの3球団は中軸を打つポイントゲッターが他にもいる。日本ハムは中田翔、ヤクルトはバレンティン、DeNAは筒香嘉智が控えているから、2番に攻撃的な打者を据えることができるのだ。
また2番に最強打者を選択するということは自動的に「犠打でつなぐ野球」を止めるということでもあるのだ。
今季の巨人には、岡本和真という伝統的な「4番打者」がいる。丸佳浩を2番に据えるのは、「連山」「尾根」打線を作る上で、大いに有効だといえよう。
メジャーの地区優勝チームの場合。
ただMLBの2番最強打者は、こんなものではない。MLBの地区優勝チーム6球団の打順別打点の分布である。
レッドソックス:99、91、142、126、101、76、72、66、61
インディアンス:96、80、110、124、92、89、64、66、64
アストロズ:78、114、87、96、96、93、68、72、59
ブレーブス:90、68、101、89、95、81、82、67、44
ブリュワーズ:61、112、110、108、87、69、73、50、41
ドジャース:80、86、96、103、101、87、64、85、54
山あり谷あり、山の景色は実にさまざま。4番最多打点の打線はインディアンスとドジャースの2球団だ。3番最多打点の打線がレッドソックス、ブレーブス。2番最強打者の打線は、アストロズとブリュワーズ。この2球団は2番の打順で100打点を挙げている。
アストロズは、1番スプリンガーの次に、24歳の若きスラッガー、アレックス・ブレグマンを2番に据えていた。3番には小さな大打者アルトゥーべ、さらに元DeNAのユリエスキ・グリエルとつながる打線。チームの打点王はブレグマンだった。
ブリュワーズは、1番打者はケイン、テームズなど固定しなかったが、2番にはクリスチャン・イエリッチを固定。3番アギラー、4番ショーという打線。イエリッチと言えば、一昨年までマーリンズでイチローのチームメイトだった若手外野手だが、昨年は首位打者、そしてMVPに輝いた。一時は三冠王の期待さえあった。
どちらのチームも強力打線ではあるが、一番いい打者を2番に据えているのだ。