ファイターズ広報、記す。BACK NUMBER
外国人選手の成否握るキーマン、
プロ野球の「通訳」という仕事。
posted2019/03/04 17:00
text by
高山通史Michifumi Takayama
photograph by
Kyodo News
人のために尽くして、尽くして、尽くし切る。それが天命になる。すべてを捧げて1シーズン、黒子として伴走する。
献身の極みにある、1つのプロ野球の業務がある。
すべての球団に存在する、通訳という職種である。
北海道日本ハムファイターズにも英語、スペイン語、中国語を操る若きスタッフがいる。俗にいう、助っ人たちに寄り添って、いつもせわしなく動き回っている。テレビ中継などで、その存在を目にすることも多いだろう。外国人選手の隣にたたずみ、コーチらとの会話を仲介していたりする。またヒーローインタビューで一緒にお立ち台に並び、質問を英訳、返答を和訳もしている。
前述したように人前に姿を現すこともあるが、舞台裏での業務は心身を削っている。そのシーズンの補強の成否のキーマンにもなるのが、通訳という職務である。選手が異国である日本での生活にストレスを感じず、フィットするように最善の手を打つ。グラウンド上だけではなく、外国人選手と家族以上に、一心同体である。サポートをする対象から目をそらすこと、逃げ出すことはできないのだ。
通訳は“黒子に徹するマネージャー”
今シーズン、一軍の通訳陣をまとめる24歳のG通訳は、こう表現する。
「ただ言語を訳す、通訳っていう仕事だとは思ってはいないです。どう表現したら、いいのか。とにかく黒子に徹しよう、と思っています。あえて例えるならマネジャーとかに、近いかもしれないです」
ポイントとなる1日の行動を、検証してみる。キャンプ地の沖縄から北海道へと移動した2月26日。外国人選手と一緒に新千歳空港へ到着すると、そのまま助っ人たちの新居へと同行したという。入居するマンションの説明等、身の回りのケアをした。テレビのスイッチの入れ方、エアコンの使い方などレクチャーは多岐に渡る。
すべてを終えた時には、時計の針は午後10時を回っていたという。そこから、外国人選手たちとささやかなディナー。万国共通で愛される中華料理に舌鼓を打ったという。空腹を満たした後、通訳はそれぞれの自宅へ帰宅。自身たちも約1カ月ぶりとなるマイホームで、いろいろと身支度を整える。
わずか1日だけのことだが、自分のことは後回しであることが如実に分かるだろう。