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太田雄貴が開くフェンシング界。
外の人材、企業と組んで前へ進む。 

text by

太田雄貴

太田雄貴Yuki Ota

PROFILE

photograph byJapan Fencing Federation/Shugo Takemi

posted2019/03/03 08:00

太田雄貴が開くフェンシング界。外の人材、企業と組んで前へ進む。<Number Web> photograph by Japan Fencing Federation/Shugo Takemi

高円宮杯では、団体戦を戦ったフルーレの選手達と観客が、揃って記念撮影する場面も。

観客数は2年前のなんと35倍。

 2日間でご来場いただいた観客数は、5248人。前々回(2016年)はわずか150人。私が会長になって初めて臨んだ前回大会(2017年)が1600人ということで、2年前と比べれば35倍、前回大会と比べても3倍以上の方々が足を運んでくださいました。

 バレーボールの応援などでも使われる、空気で膨らませたチアスティックを打ち鳴らしながら、みんなで声を合わせて応援する――世界中のフェンシング会場でもあまり観ることの出来なかったそんなにぎやかな光景を、観ることが出来ました。

 日本の選手たちも、応援していただけることの“パワー”を、身をもって感じとっていたようです。特に2日目の団体戦では、まるでアーティストのライブでオーディエンスとアーティストが一緒になってSNS用の撮影をするような形で、観客のみなさんと日本代表の選手たちが記念撮影をする、そんな光景も見られました。

 また、海外の選手やスタッフたちも、試合後のサイン会も含めて、今までに経験したことのない試みを、とても喜んでくれていました。選手入場時、近くの観客がハイタッチを求め、それに選手たちが笑顔で応じる場面が自然発生的に起こっていたのも印象的でした。

 私自身も、観客の皆さんに交じって声援をおくりつつ、小さなお子さんたちがチアスティックを剣替わりにして遊んでいる風景を見て、これこそが求めていたものだと感じました。

目指したのはフェスの賑やかさ。

 気軽に、また安全にフェンシングのエッセンスを楽しめる「スマートフェンシング」というゲームの体験ブースも作りました。初日は会場とは別のフロアで実施していましたが、2日目には思い切って、試合が行われるピットの近くに移しました。

 そうすることで、お祭り、フェスのような空間を作ってみたかったからなのです。

 一流のアスリートたちによる迫力ある試合、それを応援する観客の皆さんの盛り上がり。その横では屋台のようにフェンシングの体験ブースがある――フェスのごちゃごちゃとした賑やかさこそが、目指したものでした。

 そうしたお祭り空間の中で、目の前でフェンサーの電光石火の戦いを体感できる。まさに、「会いに行けるアスリート」のような状態を作ることが出来ました。これはフェンシングというスポーツが持っているストロングポイントでもあります。改めて私自身も実感し、さらにその体験を膨らませていきたい、と思いました。

 その上で重要なのは、家族連れでいらしていただいたとして、お子さんが「フェンシングをやってみたい!」と思い、親にその気持を伝えたとき、保護者の方がすぐに体験できる環境を見つけることができる、ということです。

【次ページ】 スタートした「レジャー化」の試み。

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太田雄貴

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