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Bリーグ勢だけで格上相手に連勝。
W杯出場バスケ日本、躍進の秘密。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2019/02/28 18:30
カタール戦では負傷交代した太田敦也を除く11人全員が得点。まさに「一丸」となった勝利で予選を締めくくった。
篠山「キツかったですよ」
あの試合でPG(ポイントガード)としてスターティングメンバーに名を連ね、試合後には批判も浴びた篠山竜青は、こう振り返る。
「キツかったですよ。もちろん、普段の試合でも自分のミスで負けることはありますけど、あのときは国を背負っているW杯の予選のプレッシャーをすごく感じていました。『そのプレッシャーを全部背負って戦いたい。勝たなければいけない』と言っていた分だけ、負けたことによるダメージはありました」
もちろん、日本代表に関わる者たちが、その状況をただ指をくわえていたわけではない。チームの活動時間を伸ばし、Bリーグの週末の試合後に都内に集合して、週の半ばまで代表合宿を行なう機会を増やす。さらには代表選手が多く選ばれるオールスターゲーム後に、現地に残って合宿を行なったこともあった。
しかし当時の日本は、崖っぷちに立たされていた。
勝つためには、強くならないといけない。
それは当たり前のことかもしれない。
ただ、強くなるためには、勝つ経験を味わう必要がある。
厳しい戦いに勝った経験が、苦境に立たされたときに心の支えとなるからだ。心の支えがチームの成長や、次の勝利につながっていく。
それは「鶏が先か、卵が先か」という部分でもある。
たぶん正解は、競技力向上のために国を挙げて様々なアプローチをし、それと同時に勢いや時代、運をも味方にして勝利を経験することなのだろう。両方がリンクしたときに、その国のレベルは飛躍的に向上する。
ファジーカス、八村、渡邊の参戦。
日本バスケットボール界は、4連敗のあとに転機が訪れた。
昨年4月。まず、Bリーグ初代MVPに選ばれたニック・ファジーカスの日本への帰化が認められた。
さらに、アメリカのシーズン中には代表活動に参加できない、若くて実力のある選手たちが、6月の予選からチームに加わった。
アメリカのゴンザガ大学で活躍する八村塁が、大学バスケのシーズンを終えた代表に合流。新シーズン開幕前の9月にもメンバー名を連ねた。そして、NBAのメンフィス・グリズリーズとの2-way契約で活躍する渡邊雄太が加わった。
アメリカの舞台で戦った経験のある彼らは、チームに自信を与えた。アジアのチームを相手にしても、恐れを抱かなかったのだ。そして、彼らがいた試合で日本は勝利を積み重ね、国際試合での勝ち方を覚えていった。