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Bリーグ勢だけで格上相手に連勝。
W杯出場バスケ日本、躍進の秘密。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2019/02/28 18:30
カタール戦では負傷交代した太田敦也を除く11人全員が得点。まさに「一丸」となった勝利で予選を締めくくった。
キーワードは「苦しい時間帯」。
1次予選は2017年11月から始まった。初戦のフィリピンに敗れ、そこから4連敗。あと1つ負ければ予選敗退の可能性が出る崖っぷちへ追い込まれていた。
苦境から這い上がって8連勝を飾ったチームの成長について、馬場はこう感じている。 「『苦しい時間』でも我慢することで、また自分たちの流れを引き寄せられるようになったと感じています」
「苦しい時間帯」というのは1つのキーワードである。
日本は予選が進むにつれて、勝ちパターンを覚えていった。まずは泥臭く、激しく守備をする。ボールを奪ったら、素早くゴールを目指す。いわゆる堅守速攻だ。
相手が日本の守備を上回る攻撃を続けることはある。日本のシュートがリングに嫌われる展開が続くこともある。それが「苦しい時間帯」である。
そんな状況でも、堅守速攻を貫ければ日本は勝てる。選手全員がそう信じられるようになった。だから劣勢に立たされても守備で汗を流し続け、コートを泥臭く駆け回った。そして格上とのアウェーゲームでも勝利をつかめるようになったのだ。
チーム全員のレジリエンス。
今回の予選の始まるおよそ5カ月前の2017年7月、バスケットボールの強豪国アルゼンチンからやってきた日本代表のラマスHC。彼は予選突破の要因をこう振り返った。
「いつも勝てるとは誰も保証してくれません。そんなのはファンタジーです。忍耐力を持って、我慢して、チームを新たな方向にむかせる。高いレベルのスポーツではやはり、『レジリエンス』が絶対に必要なのです」
「レジリエンス」――アルゼンチン生まれの熟年の指揮官がキーワードにあげたこの言葉は、「(病気や苦難などから)回復する力」を意味している。
長らく世界の舞台から遠ざかっていた日本代表がW杯の切符をつかみとったのは、苦しい状況にも耐え、そこから巻き返すメンタリティーを手にしたからだった。
もっとも、ラマスHCは謙遜まじりにこう話す。
「私が全てを変えたとは思っていません。チーム全員でやってきた結果です」
「チーム全員」という点に、話の肝がある。
初戦から4連敗したときには、日本代表というチームに巻き返す力はおろか、耐える力さえも備わっていなかった。
それが顕著に表れたのは、今から1年ほどの前の昨年2月のこと。予選の3試合目となるチャイニーズ・タイペイ戦だった。予選で対戦したなかで最も力の劣るチームの一つにホームで敗れたときには、日本代表は悲観的な空気に覆われていた。