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心ここにあらずのA・サンチェス。
マンU戦力外の日が近づいてきた。
posted2019/02/24 10:00
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph by
Uniphoto Press
請われて籍を移すケースがある。ところが、聞くと見るとは大違い。
美辞麗句を並べて求められたはずなのに、デスクすらない。権限が与えられず、組織のサポートも皆無同然で、取材対象との微細な飲食代すら自前だった。20年近く前の某出版社で実際に起きた一例である。移籍はかくも難しい。
1年ほど前、アレクシス・サンチェスは合意説も流れたマンチェスター・シティではなく、どういうわけかアーセナルからマンチェスター・ユナイテッドにやって来た。
「俺は必要とされている。輝かしい実績を残しながら、なおかつ勝利を渇望するジョゼ・モウリーニョ監督(当時)の存在も、移籍を決めた大きな理由だ」
サンチェスは充実した表情で、『MUTV』のインタビューに応えていた。しかし、ユナイテッドとアーセナルが対極に位置していたことを、なぜサンチェスは重視しなかったのだろうか。
失点を極端に恐れるモウリーニョは、前線の選手たちも守備の制約で縛り付けていた。プレーエリアは低く、自由闊達なプレーは批判の対象にもなりうる。一方のアーセナルは天性のままに、悪くいえば締まりのないチームだった。当時のアーセン・ベンゲル監督が選手の発想に委ねていたからこそ、サンチェスは気ままにプレーできたのだが……。
チーム内の序列も下がる一方。
上司が変わったのだから、異なるプランに対応しなければならない。いや、そもそもユナイテッドを選ぶべきではなかった。サンチェスはカウンターに適していない。守備意識は決して高くなく、プレッシングも継続性に欠ける。昨年1月に移籍が決定した当時も、世界中のメディアが首を傾げていた。
「なぜユナイテッドを選んだのか」
「半年待って、パリ・サンジェルマン、あるいは本人が希望したシティに移籍するべきではなかったのか」
「モウリーニョがサンチェスを重視するとは思えない」