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<新コーチ・モヤが明かす>
ラファエル・ナダル「史上最強のラファに」
text by

内田暁Akatsuki Uchida
photograph byHiromasa Mano
posted2017/07/03 06:00

登場以来66勝1敗と無敵を誇ってきた全仏で、ナダルは'15年、'16年と優勝から遠ざかった。ファンの多くが時代の終焉を確信するなか、赤土の王は帰還した。郷里の英雄、モヤとともに。
始まりは、1本の電話だった――。
2016年12月。IPTL(新興の国際大会)に“レジェンドプレーヤー”として参戦すべく東京を訪れていたカルロス・モヤは、携帯から聞こえてきたよく知る声の提案に、驚きを隠せなかったという。
声の主は、トニー・ナダル。ラファエル・ナダルの叔父にして、彼の長年のコーチである。
「ラファエルのチームに、コーチとして加わってほしい」
トニーはモヤに、そう伝えた。
ナダルより10歳年長のモヤは、元世界1位で1998年全仏オープンの優勝者。ナダルと同じマヨルカ島の出身であり、ナダルにとっては、郷里の英雄的存在だ。
ナダルと初めてボールを打った日のことを、モヤは今もよく覚えている。
「彼が12歳、僕は22歳だった。僕が参戦していたドイツの大会の会場で会い、15分か20分ほど打ち合ったんだ。当時の彼はあの年代のベストの選手だったが、それでもまだ、自分が何者か知らない少年だった。
オフコートでは、とてもシャイだったよ。ところが一度コートに立ったら、まるで野獣みたいにボールを打つんだ」
優しい笑みを浮かべて振り返るその日以来、モヤはナダルの良き兄貴分となる。ふたりはマヨルカ島で共に練習し、やがてモヤが引退した後も、ナダルは時折アドバイスを求めていた。
こちらは雑誌『Number』の掲載記事です。
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