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<日本ラグビーの遥かな旅路>
サンウルブズ「1年目の確かなステップ」
text by

大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byAki Nagao
posted2016/06/10 09:00

5月20日、サンウルブズは、リゾート地・ゴールドコーストに近い宿舎付近で練習を終えてから、翌日の試合に備え、ブリスベン市内に移動した。ホテルに入った後、大野均はブリスベンの町中を歩いた。
良い町だな、と大野は思った。
町全体が、新しすぎず、古すぎない。道行く人たちの表情は柔らかく、明るい。クルマの運転マナーも良い。町全体に、リラックスした時間が流れている。
ゴローはこんな町に住んでるんだな、と大野は思った。
ゴロー、つまり日本代表のチームメイトだった五郎丸歩は、この町に本拠を置くレッズに、今年の2月から加わっている。
こんな町でラグビーしてるのか。いいな、いい経験しているな、と大野は思った。
初めて日本代表入りしてからまる12年。昨秋のワールドカップ(W杯)まで日本代表歴代最多、96のテストマッチを戦ってきた生けるレジェンドはデビュー以来、欧州、アジア、北南米から太平洋に浮かぶ島々まで、世界中のさまざまな土地を訪れてきた。
今年で38歳。多くの選手にとっては、すでに現役生活を終えている年齢になって、大野の訪問地リストには、今年、新たな都市が次々に書き込まれている。赤道直下、炎暑のシンガポールでボールを追い、アフリカ大陸南端の港町ポートエリザベスで身長2m超の大男たちと体をぶつけあった。標高1400mの高地ブルームフォンティンで薄い空気に耐えながら、倒れて起きての肉弾戦に体を張った。遠距離のフライトを繰り返しながら、ほぼ毎週、まったく初めて対戦する相手と、ほとんどは初めて訪れる土地で戦う。
こちらは雑誌『Number』の掲載記事です。
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