Jをめぐる冒険BACK NUMBER
浦和オリヴェイラ監督に訊く・前編。
自信を取り戻させた方法論とは。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byYuki Suenaga
posted2019/02/21 17:25
単独インタビューに応じたオズワルド・オリヴェイラ監督。その眼力はモチベーターらしい情熱にあふれていた。
全力で勝利を求め続けた結果。
――堀孝史監督が開幕から1カ月で解任され、暫定的に大槻毅監督が立て直したタイミングでの就任でした。当時、選手の状態をどう感じていて、どうアプローチされたのでしょうか。
「浦和から連絡を受けてすぐ、ブラジルで浦和の試合をチェックしました。一緒に仕事をしたことがある慎三、対戦したことのある槙野智章、柏木陽介、森脇良太、阿部勇樹を除くと、知らない選手ばかりでした。
さらに、来日した頃、水曜と土曜に試合がずっと組まれていたので、まさに先ほど話した『練習したくても試合があるからできない』という状況でした。そこでまずは私自身がチームに対する知識を深め、クラブに順応することを重視しました。
ワールドカップによる中断期間中に静岡キャンプが組まれていることは把握していたので、そこでチームを進化させようと思っていました。その静岡キャンプでフィジカルトレーニングを積みました。
ここでコンディションが向上したことでパフォーマンスが上がった選手たちがいます。その代表格が武藤雄樹です。彼は後半戦に入って、決定的な仕事ができるようになった。力強さと俊敏さがアップし、得点力が戻ってきました。戦術面においても重要な存在となりました」
――シーズンを通して見たとき、26節の横浜F・マリノス戦(9月16日/○2-1)、27節のヴィッセル神戸戦(9月23日/○4-0)あたりがターニングポイントのように感じました。横浜戦はファブリシオが負傷した直後のゲームでしたが、粘り強く勝ち切り、天皇杯制覇へと繋がる勝負強さを見せた。神戸戦では3ボランチが見事にハマり、その後のベースになったからです。監督にとってのターニングポイント、大きな意味を持つゲームはどれですか?
「おっしゃるとおり、その2試合が重要な試合であることは間違いないです。さらに、川崎フロンターレとの2試合(5月2日/○2-0、8月1日/○2-0)、アウェーのサンフレッチェ広島戦(7月28日/○4-1)での勝利も、チームに自信を与えたという点で重要な試合でした。自分たちはできるんだ、内容のいい試合で勝てるんだと、自分たちのことを信じられるようになったと思います」
――これまでの浦和は、どこか勝負弱い面がありました。しかし、天皇杯では1-0の勝利を積み重ね、勝者たり得る勝負強さがあった。勝利やタイトルへの執着心をどのように植え付けたのでしょうか? 大舞台でもいつもどおり戦えるようになった秘訣はどこにありますか?
「それは、常に全力で勝利を掴み取ることを求め続けてきた結果でしょう。ただ、簡単ではありませんでした。シーズン終盤になると、選手の消耗も激しくなり、少し脆い状態だったと思います。あの頃、負傷した青木拓矢や武藤は、今もまだ練習に完全に合流できていません(※取材の2月中旬時点)。
彼らだけではなく、慎三は足首、アンドリュー(・ナバウト)は鼠径部、柏木も少し消耗していて、途中で代えざるを得ない試合がありました。彼らはチームに必要な存在ですから、タイミングを見ながらやりくりして、重要な試合ではできるだけ揃って起用できるようにしました」