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酒井高徳は「重要すぎる選手」。
新システムの中心に選ばれた理由。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2019/02/19 10:30
日本代表時代、ボランチを務めたこともある酒井高徳。マルチロールな能力が28歳にして開花し始めた。
「監督は横パスをすごく嫌う」
酒井は、ボルフ監督に中心的な役割を与えられるなかで、「攻撃が遅くなったり、横パスが多くなったりするのを監督がすごく嫌う」と感じている。
「日本人って、しばしば横パスで時間を作ろうとしてしまうんですよ。でも海外の強いチームって、縦パスで(味方が攻め上がったり、相手の守備を崩すための)時間を作るんですよね。バルサのようなサッカーを目指しているはずなのに、実際はそうではないケースはよくありますよね。
なぜそうなのかといったら、繰り出しているパスが、相手にとって危ないパスではないからだと思うんです。日本でボールを回しているというのは、やはりティキタカのイメージに近いのかな……。うちの監督もゲームを支配しろと言いますけど、ボールを回せとはいっていなくて」
ボルフ監督の用意する練習のメニューにも特徴があるという。
「トレーニングでも、縦に早くパスをつけること、素早くターンすること、縦に早く仕掛けることを意識させられます。それはカウンターアタックの練習のときも、ポゼッションのときもです。コーンを四隅に置いて『その中で(パスで)20タッチ以上してください』みたいなトレーニングはほとんどしないですから」
2部ではもっと圧倒的な内容を。
シーズン序盤に監督解任というハプニングがありながらも、ドイツサッカー界期待の知将を招き入れたハンブルガーは、第12節以降首位をキープしている。
さらに、DFBポカール(ドイツ杯)でも2月5日に1部のニュルンベルクを下して、準々決勝進出を決めた。準々決勝の相手は同じく2部のパーダーボルンだ。1年での1部昇格だけではなく、ドイツ杯躍進の可能性も出てきた。
「今のサッカーのままでは、1部に上がったとしても厳しい戦いになると思っています。だから、僕たちは今のサッカーをもっと突き詰めないといけないし、2部ではもっと圧倒的な内容で勝たないとダメです」
酒井はシーズン後半戦を迎えるにあたってそう語るなど、慎重な姿勢を崩してはいなかった。ただ――。