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酒井高徳は「重要すぎる選手」。
新システムの中心に選ばれた理由。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2019/02/19 10:30
日本代表時代、ボランチを務めたこともある酒井高徳。マルチロールな能力が28歳にして開花し始めた。
ボールを回すより素早くゴール。
当然ながらボルフ監督は、相手を押し込むことを求めている。ただ、酒井はこうも解説している。
「相手チームを押し込むというと、ポゼッションサッカーに特化すると勘違いされやすいですが、そうではない。監督はボールを回すよりも、素早くゴールを仕留める方が良いとも言っている」
ティッツ前監督時代とボルフ監督が就任してからのリーグ戦のスタッツを比較すると、その変化は見てとれる(以下は、いずれも1試合平均の数値)。
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・カウンターの数=3回→7.7回
・ボール支配率=66%→49%
・横パスの数=244本→157本
・相手に許した枠内シュート=4本→1.3本
ボルフ監督は主導権を握ることを求めている。しかし、それはボール支配率を上げるためではない。ゴールに迫るためなのだ。
「ティキタカ」の誤った解釈。
ボールを支配さえすれば、相手チームの脅威になる――その解釈が誤った方向に進むケースも少なくない。
例えば「ティキタカ」と呼ばれるスタイルである。
パスを多くつなぎながら仕掛ける形だが、2010年W杯や2012年EUROを制したスペイン代表がその典型と言われていた。また、バルセロナの監督を務めていた当時のグアルディオラのサッカーが「ティキタカ」と呼ばれることもあった。
しかし当のグアルディオラが、「ティキタカ」という言葉にも、自らが率いるチームについてそう形容されることにも、強い嫌悪感を示していたのは有名な話だ。パスをつなぐのは、あくまでもゴールを奪うため。または失点しないための「手段」であって「目的」ではないと主張したかったのだろう。
サッカーの本質はあくまでも、相手よりも多くのゴールを奪って勝つこと。「目的」はそれしかない。その目的達成のための「手段」はいくつもある。