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酒井高徳は「重要すぎる選手」。
新システムの中心に選ばれた理由。
posted2019/02/19 10:30
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
Getty Images
「ワイドの位置だけでプレーしていたときよりも、プレーの選択肢も、自分の考えることも増えています。だから、今はメチャメチャ楽しいんですよ! これから選択しようとするプレーに正解はなくて、そのプレーが成功して初めて正解になる。その感覚がメッチャ面白いんです、最近は。うん、ヤバイですね(笑)」
そんな言葉を聞いたのは、今年のはじめ。声の主は酒井高徳だった。日本での年末年始の休暇を終え、羽田空港からハンブルガーへ戻る際の取材でのひとコマだった。
昨シーズン、ハンブルガーSVは17位に終わり、クラブ史上初の降格となった。今シーズンは自身、そしてクラブにとって初の2部に挑んでいる。その戦いは、順風満帆というわけではない。
ティッツ前監督はボールポゼッションにこだわり、ゴールキーパーがハーフウェイライン付近まで上がり、まるでセンターバックのようにビルドアップに参加するサッカーを展開していた。そんな独特なサッカーに、酒井は楽しみを見いだしていた。しかしチームの成長が見られないという理由で、クラブは10月に指揮官を解任した。
気鋭の新監督から全幅の信頼。
その後、10月23日に新たにやってきたハネス・ボルフ監督は、酒井をさらに刺激した。
「オマエはもうすぐ、28歳か……。大丈夫だ。このまま俺と一緒にやっていけば、オマエは成長していけるぞ! 『6番のポジション』でもプレーできるサイドバックはなかなかいないから」
ヴォルフの経歴を簡単に紹介すると、ホッフェンハイムの31歳ナーゲルスマン(31歳。来季からRBライプツィヒを指揮)や、シャルケのテデスコ(33歳)とともに、いわゆる「ノートパソコン監督」世代にあたる、新進気鋭の37歳だ。
ドルトムントU-17の監督として2013-14シーズンから2季連続優勝。さらに、その主力とともに“進級”する形で、2015-16シーズンにはドルトムントU-19で優勝した(当時の成長株が、来季からチェルシーへ移籍する米国代表のプリシッチ)。
翌シーズンにはシュツットガルトを2部優勝に導き、1年で1部に復帰させた。昨年1月に監督の座を追われたものの、昨年3月にはドイツサッカー連盟による年間最優秀監督賞に選ばれた。
そんな監督から全幅の信頼を寄せられ、燃えない選手がいるだろうか。