野球クロスロードBACK NUMBER
浅村栄斗はフルスイング+頭脳野球。
山崎武司に似たスラッガーの匂い。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2019/02/14 17:30
ロングティーで快音を響かせる浅村栄斗。4年で30億超とも言われる年俸に見合った働きができるか。
3年前まではただフルスイング。
入団6年目、23歳の内田靖人も田中同様に浅村に目を光らせる。昨年12本塁打と存在感を示した若手の長距離砲も、「強く振っているのに、どんなコースのボールでもしっかり捉えることができている。自分もできるように頑張りたいですね」と息巻く。
もっとも浅村本人は、若手にもたらす効果について「別に人に見てもらうためにやっているわけではないんですけどね」と謙遜する。
浅村と言えばフルスイング。今やすっかり定着したイメージではあるが、それだけでタイトルを獲得し、FAの目玉選手になるほどの実績を積み上げてきたわけではない。
「3年くらい前までは、ただがむしゃらにやっていただけでしたね」
3割1分7厘、27本塁打、110打点と暴れ、初の個人タイトルとなる打点王を獲得した'13年までは、身体能力やそれまで培ってきた技術に頼っていたと、浅村は自認する。
能力だけでは打ち続けられない。
改革のきっかけとなったのは、その翌年からの低迷だった。
各球団に徹底的にマークされ、2年間、苦しんだのだ。
ここで悟る。がむしゃらにやるだけじゃダメなんだ――と。導き出した答えが、「頭を使うこと」だった。
試合前から相手投手のデータをインプットし、打席に立てば配球を読み、狙い球を絞るといった駆け引きを展開する。そこに代名詞であるフルスイングが加われば、結果がついてくるのは必然だった。
'16年、3年ぶりの3割をマークしたことが、浅村のバージョンアップを物語っていた。
「能力だけで打ち続けられる選手なんていないですよ。いたとしても本当に一握りなんで。相手が自分を丸裸にしてくる以上は、こっちもそれをしないといけない。レベルの高いプロは、そのせめぎ合いのなかで勝っていかないとダメだって思えたのが大きかった」
楽天において、能力の壁に翻弄されながらも、頭を回転させることで再生した選手と言えば球団創設当初から長らく「不動の主砲」として君臨していた山崎武司を思い出す。