野球のぼせもんBACK NUMBER
年上の内川、松田にも笑顔とヤジ。
新米コーチ本多雄一の奪Sh!改革。
posted2019/02/15 07:00
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Kotaro Tajiri
3万1100人。
公式戦でもない、言ってしまえば「ただの練習」にこんな多くのファンが集まる。3連休真ん中の10日のことだ。その3日間の合計では7万8700人が来場した。ホークスの宮崎春季キャンプは今年も大盛況だ。
お目当ては各々だが、メイン球場のスタンドに陣取った場合の“華”といえばフリー打撃だろう。木製バットが奏でる快音。外野フェンスを越えていく美しい放物線が数えきれないほど描かれる。普段は巧打者タイプでも、練習では大抵誰もがスラッガーに変身する。それがプロ野球選手の持ち合わせるパワーと能力である。
しかし、今年のホークスのキャンプの様子は、少し違っている。
実際にキャンプを見学に来たり、試合前の早い時間に球場に来たりする読者の方はご存知かもしれないが、打撃練習の傍らでは守備練習も同時進行で行なわれている。
投球のタイミングや打球の行方を確認しながら、その隙をついてノックをする。あくまで打撃練習がメインといった具合で、こういっては失礼だがちょっと脇役のような存在なのだ。
新米・本多コーチに釘付け。
だが、今年のホークスでは逆転現象が起きている。
就任1年目の新米コーチのノックに、みんなの目が釘付けだ。受け手の内野手との絶妙な掛け合いもじつに面白い。スタンドまで届く大きな声でやりとりしてくれるから、ドッと笑いが沸き起こる。
威勢のいい声を上げてノックバットを振り抜くのは、背番号80、一軍内野守備走塁コーチの本多雄一である。
昨季までバリバリの現役プレーヤーだった。2年連続盗塁王や2度のゴールデングラブ賞など輝かしい実績を残し、ファンからは「ポンちゃん」の愛称で深く愛された。しかし、首を痛め、それ以降は満足いくプレーができなくなったことで、34歳の若さで惜しまれながら選手生活に別れを告げたのだった。